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🎯 結論

  • ショック時の輸液蘇生は 目標指向型蘇生(Goal-directed resuscitation) が基本であり、決められた量を一律に投与するのではなく、ボーラス投与→再評価→必要時追加のサイクルを繰り返す。
  • : 等張性晶質液のショックドーズは 80-90 mL/kg。初期ボーラスは 20 mL/kg を15-20分 で投与し、心拍数・血圧・CRT等を再評価する。
  • : ショックドーズは 50-55 mL/kg だが、猫は体液過負荷に極めて脆弱。初期ボーラスは 5-10 mL/kgの小容量ボーラス(Titration) で開始し、少量ずつ慎重に投与する。
  • 膠質液はかつて頻用されたが、近年は敗血症患者での腎障害リスクから使用は慎重に傾いている。
  • 猫のショックの三徴(徐脈+低体温+低血圧)を認識し、犬と同じアプローチを適用しないことが重要。

📖 詳細解説

ショックは「組織への酸素供給が組織の酸素需要を満たせない状態」であり、最終的に臓器不全に至る。輸液蘇生の目的は循環血液量の回復と組織灌流の改善にある。

ショックは大きく4つに分類される:

タイプ
循環血液量減少性 出血、脱水、第三腔液貯留
分布異常性 敗血症、SIRS、アナフィラキシー
心原性 心タンポナーデ、重度不整脈、弁膜症
閉塞性 GDV、肺血栓塞栓症、緊張性気胸

いずれのタイプでも初期対応に輸液は重要だが、心原性ショックでは過剰輸液が致命的となりうるため、カテゴリーの鑑別が不可欠である。

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乳酸リンゲル液(LRS/Hartmann液)や0.9%生理食塩水が第一選択。

犬のショックドーズ

  • 全量: 80-90 mL/kg
  • 初期ボーラス: 20 mL/kgを15-20分かけて静注
  • ボーラス後に心拍数、脈の質、粘膜色、CRT(毛細血管再充満時間)、血圧、意識レベルを再評価
  • 改善が不十分であれば追加ボーラス(20 mL/kg)、計90 mL/kgまで

注意: 20-50 mL/kgを初期投与とするガイドラインもあるが、いずれの場合も「一度に全量を投与しない」原則を守り、各ボーラス後の再評価が必須。

猫のショックドーズ ─ 犬とは根本的に異なる

  • 全量: 50-55 mL/kg
  • 初期ボーラス: 5-10 mL/kgの小容量ボーラス(Titration) を15-30分かけて投与し、各ボーラス後に必ず再評価

猫が犬と異なる理由:

1. 猫は犬に比べて肺水腫に陥りやすい
2. ショック時に猫は徐脈・低体温・低血圧の三徴を呈することが多く、犬のような頻脈・粘膜紅潮はむしろ例外。
3. 低体温の猫では末梢血管がカテコラミンに反応しにくく、大量輸液後の復温で一気に血管が拡張→肺水腫のリスクがある。
4. まず保温と小容量輸液を同時に行い、復温を確認しながら漸増する。
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大分子量のポリマー(ヒドロキシエチルスターチ:HES等)を含み、タンパク質結合力により血管内に水分を保持する。

投与量

ボーラス量 24時間上限
5-10 mL/kg ~20 mL/kg
1-5 mL/kg 10-20 mL/kg

使用上の注意

近年、ヒト医療におけるRCT(6S trial, CHEST trial)で敗血症患者へのHES使用と腎障害リスクの関連が示されて以降、獣医療でも膠質液の使用は慎重になっている。特に敗血症や全身性炎症反応を伴うショックでは、晶質液ベースの蘇生が推奨される傾向にある。

低アルブミン血症(<2.0 g/dL)を伴う症例や、大量の晶質液投与に反応しないケースでは依然として選択肢となりうる。

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3-7.5%の高張食塩水は、間質・細胞内から血管内への急速な水分移動を引き起こし、少量で迅速な血管内容量拡張を達成する。

投与量 投与方法
4-5 mL/kg 10-15分かけてIV
2-4 mL/kg 10-15分かけてIV

適応: 頭部外傷(脳浮腫軽減)、急速な血管内容量拡張が必要な場面。

禁忌: 高ナトリウム血症、重度脱水(間質から水分を引き抜くため悪化)、未コントロールの出血。

高張食塩水投与後は等張性晶質液による間質液量の補充が必要。

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蘇生の効果判定に用いるパラメータ:

パラメータ 目標
心拍数 正常範囲(犬80-120, 猫160-220)
CRT < 2秒
粘膜色 ピンク
血圧(MAP) > 65-80 mmHg
尿量 > 1 mL/kg/h
乳酸値 < 2.5 mmol/L
意識レベル 改善

蘇生のエンドポイントを意識し、「もう少し」の追加投与が体液過負荷を引き起こさないよう常に注意する。

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「ショック状態と言われたのですが、どういうことですか?」

ショックとは、体中の臓器に十分な血液(酸素)が行き届かなくなっている危険な状態です。出血、重症感染、アレルギーなどさまざまな原因で起こります。今は急速に点滴を行って血液の循環を回復させる「蘇生」処置を行っています。状態の変化をこまめに確認しながら点滴の量を調整していきます。

「点滴をたくさんしても大丈夫ですか?」

点滴は多ければ多いほどいいというものではありません。特に猫や心臓病のある子の場合、過剰な点滴は肺に水が溜まる「肺水腫」を引き起こすリスクがあります。ですので私たちは少量ずつ投与して体の反応を確認しながら、慎重に量を調整しています。これが「目標指向型」といわれる輸液の方法です。
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  1. Davis H, et al. AAHA/AAFP Fluid Therapy Guidelines for Dogs and Cats. JAAHA, 2013.
  2. Silverstein DC, Hopper K. Small Animal Critical Care Medicine, 3rd ed. Elsevier, 2022.
  3. Cazzolli D, Prittie J. The crystalloid-colloid debate: Consequences of resuscitation fluid selection in veterinary critical care. JVECC, 2015.
  4. Mazzaferro EM. Update on Hypertonic Saline Use in the Treatment of Severe Hypovolemia and Shock. Today's Veterinary Practice, 2023.
  5. Rudloff E, Kirby R. Fluid therapy: Crystalloid and colloid therapy. Vet Clin North Am Small Anim Pract, 2008.
  6. Smart L, et al. Fluid therapy for cats and dogs: guidelines and controversies. VetEducation, 2024.