前庭系は体のバランスと空間認識を司る感覚系であり、末梢前庭器(内耳の前庭・三半規管、前庭神経[第VIII脳神経])と中枢前庭核(延髄・小脳)から構成される。
前庭系の障害は以下の特徴的な症候群を引き起こす。
| 所見 | 末梢性 | 中枢性 |
|---|---|---|
| 眼振の方向 | 水平性・回旋性(方向は一定) | 垂直性、または頭部の位置で方向が変化(positional nystagmus) |
| 意識レベル | 正常 | 低下(混迷・昏睡)の可能性あり |
| 姿勢反応 | 正常 | 同側の不全麻痺、姿勢反応の低下 |
| ホルネル症候群 | 病変側に併発することがある | まれ |
| 顔面神経麻痺 | 病変側に併発することがある | まれ |
| 斜頸 | 病変側に傾く | 病変側に傾く(鑑別には不十分) |
⚠️ レッドフラグ(中枢性を示唆する所見): 上記の鑑別表において、垂直性眼振、意識レベルの低下、姿勢反応の異常の一つでも認められた場合は中枢性前庭疾患の可能性が高く、MRI検査が強く推奨される。
犬の末梢性前庭疾患で最も一般的な原因。中高齢犬に突然発症する。
前庭徴候による激しい悪心・嘔吐と食欲廃絶が問題となるため、対症療法が中心。