歯の破折で最も重要な判断ポイントは「露髄(歯髄の露出)の有無」である。露髄がある場合、放置すれば100%歯髄壊死→根尖周囲病変(根尖膿瘍)に進行する。治療は抜歯または抜髄根管治療(Root Canal Therapy)の二択であり、「様子を見る」という選択肢はない。根管治療の成功率は専門医の適切な処置で85〜95%とされるが、歯周組織の破壊が重度(分岐部病変ステージ3以上)や歯根吸収が広範な場合は抜歯が適応となる。破折の原因として最も多いのは蹄・牛骨・ナイロンボーンなどの硬いガム・おもちゃであり、飼い主教育が予防の要となる。
| ❌ 旧来 | ✅ 最新 |
|---|---|
| 割れた歯も犬は痛がらないから大丈夫 | 犬猫は痛みを隠す動物であり、破折歯の露髄は激痛を伴う。痛がっていないように見えても歯髄壊死と感染は静かに進行する |
| 小さいヒビ(亀裂程度)なら経過観察 | 非露髄の合併症のない亀裂でも歯科用X線での評価が必須。目視では確認できない歯髄への波及が存在することがある |
| 歯を温存するのが最善 | 温存できるのは根管治療が適応となるケースのみ。重度歯周病の合併歯を無理に温存すると二次感染のリスクが高まる |
| 分類 | 特徴 | 処置 |
|---|---|---|
| エナメル破折 (Enamel Fracture) | エナメル質のみの欠損。象牙質は露出していない | 鋭縁の研磨のみで可。経過観察 |
| 非複雑歯冠破折 (Uncomplicated Crown Fracture) | エナメル+象牙質が露出。歯髄は露出なし | 象牙質の被覆処置(ボンディング等)。歯科X線でフォロー |
| 複雑歯冠破折 (Complicated Crown Fracture) | 歯髄が露出。出血点が確認できる | 根管治療または抜歯 |
| 歯冠-歯根破折 | 破折線が歯肉縁下まで及ぶ | 温存困難なことが多く、多くの場合抜歯が第一選択 |
| 歯根破折 | X線でのみ確認可能 | 抜歯が標準。位置と安定性により経過観察されることもある |
💡 臨床Tips
- 根管治療は全身麻酔下で行う。無麻酔での実施は不可能である。
- 一般病院で根管治療を行う設備がない場合は、露髄歯に対してまず抗菌薬と鎮痛薬を処方し、専門医への紹介を検討する。放置だけは避ける。
- 幼若犬(乳歯の破折): 後継永久歯の歯胚への影響がありうるため、速やかな乳歯抜歯が推奨される。
| 状況 | 理由 |
|---|---|
| 分岐部病変ステージ3以上 | 多根歯(上顎第4前臼歯など)の歯根分岐部で50%以上の骨吸収がある場合、温存の予後は不良 |
| 広範な歯根吸収 | 吸収が進んでいる歯根は根管治療の固定が得られない |
| 歯冠-歯根破折(歯肉縁下に及ぶ) | 修復マージンの確保が困難 |
| 根管治療後の再感染 | 再治療か抜歯。一般的には抜歯が選択されることが多い |
以下は歯の破折を引き起こす代表的な硬い物品であり、獣医歯科学会(AVDC)は使用を推奨していない。