犬の前(頭側)十字靭帯(Cranial Cruciate Ligament: CrCL)は、脛骨の前方変位と内旋を制限する最も重要な膝関節内靭帯である。犬のCrCL断裂は、ヒトのように急性外傷で起こるケースもあるが、多くは進行性の靭帯変性を基盤とした断裂であり、体重過多、後肢のアライメント異常(脛骨高平面角の過大)、免疫介在性の因子が関与する。
片側の断裂後、対側膝のCrCLも40〜60%の確率で2年以内に断裂することが知られており、飼い主への情報提供が重要である。
脛骨近位を半月状に骨切りし、脛骨高平面角(TPA)を約5〜6.5°に矯正することで、荷重時の脛骨推進力(tibial thrust)を中和する手術。
脛骨粗面を前方に移動させ、膝蓋靭帯の角度を変更することで脛骨推進力を中和する手術。
関節の外側に人工靭帯(ナイロンリーダーラインなど)を設置し、脛骨の前方変位を物理的に制限する方法。
CrCL断裂症例の約40〜60%で内側半月板の損傷を併発する。不安定な膝関節では、荷重のたびに脛骨が前方にスライドし、内側半月板の尾側角(caudal pole)が大腿骨顆と脛骨の間で挟み込まれて損傷する。
術後のリハビリテーションは、手術の成功率を最大化するために不可欠である。