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🎯 結論

  • 最も危険な電解質異常: <6.5 mEq/L未満では無症状な事が多いが、7.0 mEq/Lを超えると急激に致死性不整脈(心室細動や心停止)のリスクが高まる。
  • 三大原因の除外: ①尿道閉塞(猫のFLUTD等)、②乏尿・無尿性急性腎障害(AKI)、③アジソン病(副腎皮質機能低下症)、この3つを常に最優先で鑑別する。
  • 治療の3段階アプローチ:

📖 詳細解説

高カリウム血症に対する心筋の感受性は個体差が大きいため、数値(mEq/L)よりも心電図異常の有無が「緊急介入の指標」となる。カリウム値の上昇に伴い、心電図は以下のように段階的に変化する。

1. 軽度〜中等度(5.5 - 7.0 mEq/L): テント状に高く尖ったT波(Tented T wave)、QT時間の短縮。
2. 重度(7.0 - 8.5 mEq/L): P波の平坦化〜消失(Atrial standstill)、PR間隔の延長、QRS波の拡大、徐脈(Bradycardia)。
3. 非常に重度(> 8.5 mEq/L): P波がないまま幅広いQRS波(サインカーブ状)が出現し、心室細動(VF)や心静止(Asystole)に至る。

※ 心電図検査は超緊急を要する場合、リードを簡便に装着して即座に評価すること。

💡 臨床のコツ(ECG先行の判断): 救急外来に「おしっこが出ないオス猫」が来たら、体温計を入れる前にまずECGリードをつける。採血結果が出る前にP波消失やQRS拡大が見えれば、その時点でカルチコールの準備を開始する。採血結果を待ってから動くのでは遅すぎることがある。

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本物の高カリウム血症をみたら、まずは排泄障害を疑う。

  • 排泄の障害(最も多い): 尿道閉塞(FLUTD等)や無尿性AKI、膀胱破裂/尿管破裂による尿腹。
  • 細胞内からの放出: 腫瘍崩壊症候群、重度の外傷・クラッシュシンドローム、重度のアシドーシス。
  • 内分泌疾患: 副腎皮質機能低下症(アジソン病:Na/K比が27未満に低下する)、消化管疾患に付随する偽アジソン病(鞭虫症など)。

※ 秋田犬などの日本犬種は赤血球内にカリウムを多く含むため、溶血による偽性高カリウム血症を起こしやすい。

💡 臨床のコツ(偽性の見極め): 「Kが高いのにECG所見は全く正常、患者の状態も良好」というケースでは、まず偽性を疑う。採血時のEDTA汚染、採血後の長時間放置、採血時の過度な陰圧(小径の針での強い吸引)による溶血、日本犬種(秋田犬・柴犬等)の高K赤血球――これらが主たる偽性の原因。疑わしい場合は再採血(できればヘパリン採血)で確認する。

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1. 心筋保護(心室細動の防止)

※心電図異常(P波消失やQRS幅拡大など)が見られる場合の最優先事項。

  • 薬剤: 10%グルコン酸カルシウム(カルチコール等)
  • 用量: 0.5 - 1.5 mL/kg IV をECGモニター下で2〜5分かけて静注(※10〜20分は低Ca血症のプロトコル。高K血症では心筋保護の即効性が求められるため遅すぎる)。
  • 機序: 心筋細胞の閾電位を上昇させ、静止膜電位との差を保つことで心筋の興奮性を安定化させる(カリウム値は一切下がらない)。
  • 効果発現: 数分以内で速やかに心電図所見が改善するが、効果は30〜60分しか持続しない。

💡 臨床のコツ(カルチコール投与の実際): カルチコールの投与中はECGモニターを見続けること。正常な反応であれば投与開始から数分でP波の再出現やQRSの狭小化が見られる。これが「効いているサイン」。逆に投与中にHRがさらに低下したり、VPCが増える場合は投与速度が速すぎるため直ちに減速する。「カルチコールはゼロか100かではなく、ECGを見ながら緒を調節する薬」だと思え。

2. カリウムの細胞内への移動

心電図が安定したら、血中のカリウムを「一時的に」細胞内へ退避させる。

  • インスリン・ブドウ糖療法:
  • 薬剤: レギュラーインスリン(RI)犬 0.5 U/kg IV、猫 0.1〜0.2 U/kg IV + ブドウ糖2-3 g/U(※猫への0.5 U/kgは致死的な低血糖リスクがあるため減量必須)。その後も数時間は2.5〜5%ブドウ糖添加液を持続点滴する。
  • 効果: インスリンがNa+/K+ ATPaseポンプを活性化させ、カリウムを強制的に細胞内へ取り込ませる。効果は15〜30分で発現し、数時間持続する。低血糖リスクがあるため1〜2時間ごとの血糖値モニタリングが必須。
  • 重炭酸ナトリウム療法:
  • 重度のアシドーシス(pH < 7.1)を伴う場合に適応。細胞外にアルカリを補充することで、細胞内からH+が出てくる代わりにK+が細胞内に入っていく。用量は計算が必要だが、1 mEq/kg程度のボラス投与から始めることが多い。
  • β2アゴニスト: サルブタモール(アルブテロール)吸入なども細胞内移行を促進するが、獣医学領域でのエビデンスは限定的。

3. カリウムの体外への排泄(根本治療)

上記①②はあくまで時間稼ぎであり、最終的には体外に出さなければ再上昇する。

  • 輸液による利尿: 生理食塩水(0.9%NaCl)などのカリウムを含まない輸液を大量投与し、GFRを増加させて尿細管からのK排泄を促す。(乳酸リンゲル液は4mEq/LのKを含むため、治療初期には0.9%生食が好まれるが、希釈効果でLRSでも下がるという意見もある。基本は生食ベースで開始する。)
  • 物理的閉塞の解除: 尿道カテーテルの留置、膀胱穿刺による減圧など。
  • 透析: 薬物や輸液療法に反応しない乏尿性AKIの場合は、血液透析(HD)または腹膜透析(PD)が必要となる。

💡 臨床のコツ(オス猫の尿道閉塞でのルーチン): オス猫の尿道閉塞は高K血症救急の最頻出疾患である。ルーチンとしては①ECG評価、②異常があればカルチコール投与、③生食ベースの輸液開始、④閉塞解除とカテーテル留置、⑤RIボーラス(K > 7.0)を「同時並行」で進める。「採血結果を待ってから」ではなく、ECG所見で動き始め、採血値が後から追いつく形が理想。

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「カリウムが高いと言われました。ただおしっこが出ていないだけなのに、なぜ心臓の治療をするのですか?」

カリウムは心臓の筋肉を動かす電気信号に深く関わっているミネラルです。おしっこが出ないとこれが血液中に溜まり、ある一定を超えると心臓の筋肉が麻痺して急に止まってしまいます(心室細動や心停止)。今すぐ心臓を守るお薬(カルシウム剤)を入れないと命に関わる超緊急状態です。

「猫がトイレに何度も行くのに少ししかおしっこが出ていませんでした。これが原因ですか?」

オス猫ちゃんに非常に多い「尿道閉塞」が原因の可能性が高いです。膀胱から尿道に結石やカスが詰まっておしっこが出なくなると、わずか24〜48時間でカリウムが致死的なレベルまで上昇し、尿毒症(急性腎障害)を引き起こします。すぐに管を入れておしっこの通り道を確保する処置が必要です。

「治療後もカリウムには気をつけたほうがいいですか?」

根本的な原因(おしっこの通り道の詰まりや、腎臓の働きの低下など)が解決されれば、カリウムは正常値に戻ります。しかし、再び詰まったり腎臓が悪化すればまた同じように上昇してしまいます。退院後も尿の出方や結石予防の食事管理をしっかり続けることが重要です。
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