輸血の開始トリガーは「PCV の数値だけ」で決定しない。急性出血ではPCV < 20%、慢性貧血ではPCV < 12〜15%で臨床徴候(頻脈、虚脱、乳酸値上昇)がある場合に実施を検討する。全血投与量の概算は2 mL/kg でPCVが約1%上昇(pRBCなら1 mL/kgで1%上昇)。最初の15〜30分は0.25〜0.5 mL/kg/hrでゆっくり開始し、副反応がなければ2〜5 mL/kg/hrに増速する。猫は初回輸血であってもクロスマッチと血液型判定が必須(B型猫にA型血を輸血すると致死的な急性溶血反応を起こす)。
| ❌ 旧来 | ✅ 最新 |
|---|---|
| PCV 20%を切ったら即輸血 | PCVだけでなく臨床徴候(頻脈・虚脱・乳酸値)を総合して判断する。慢性貧血では代償が効いておりPCV 12%でも安定していることがある |
| 犬の初回輸血はクロスマッチ不要 | DEA 1.1陰性の血液を使用できない場合や、過去の輸血歴が不明の場合は初回でもメジャークロスマッチを推奨 |
| 猫も初回は型判定なしでOK | 猫は自然抗体(特にB型猫の抗A抗体)が存在するため初回でも致死的反応が起こる。型判定+クロスマッチ必須 |
| 指標 | 輸血考慮の目安 |
|---|---|
| PCV(急性出血) | < 20% |
| PCV(慢性貧血) | < 12〜15% かつ臨床徴候あり |
| 血中乳酸値 | > 2.5 mmol/L(組織低酸素の客観的指標) |
| HR(心拍数) | 安静時の予測値を著しく超える頻脈 |
| 臨床徴候 | 虚脱、起立不能、粘膜蒼白、CRT延長 |
💡 臨床Tips
- 急性出血の初期はPCVが正常値を示すことがある(赤血球と同割合で血漿も失われるため)。受傷後1〜2時間は脾臓からの代償性収縮もあり、PCVだけで重症度を過小評価しやすい。体液補正(晶質液投与)後に希釈されてPCVが急低下するのは想定内であり、この時点で改めて輸血判断を行う。
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投与量(mL) = 90(犬) or 66(猫) × 体重(kg) × [(目標PCV − レシピエントPCV) ÷ ドナーPCV]
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| 製剤 | 概算 |
|---|---|
| 全血 (WB) | 2 mL/kg で PCV 約1%↑ |
| 充填赤血球 (pRBC) | 1 mL/kg で PCV 約1%↑ |
例: 10 kgの犬、PCV 12% → 目標20%とすると、全血なら 10 kg × 8 × 2 = 160 mL
| フェーズ | 速度 | 目的 |
|---|---|---|
| 最初の15〜30分 | 0.25〜0.5 mL/kg/hr | 副反応(発熱・蕁麻疹・溶血)の早期検出 |
| 安定確認後 | 2〜5 mL/kg/hr | 通常の維持投与 |
| 緊急時(活動性出血) | 最大 10〜20 mL/kg/hr | 循環血液量過多(Volume overload)に厳重注意。特に猫・心疾患既往は慎重に |
投与開始後にモニタリングすべき指標を以下にまとめる。
| 項目 | 頻度 | 注意点 |
|---|---|---|
| 体温 | 15分ごと → 安定後30分ごと | 1℃以上の上昇で一旦停止・評価 |
| HR, RR | 同上 | 頻脈・頻呼吸は副反応の初期徴候 |
| 尿の色 | 投与開始30分後にチェック | 血色素尿 → 溶血反応 |
| 粘膜色・CRT | 投与前 → 投与中 → 投与後 | 改善の経過を客観的に記録 |
| PCV/TP | 輸血前 → 投与後1時間 → 翌日 | 輸血効果の定量的評価 |
| 副反応 | 時間枠 | 徴候 | 対処 |
|---|---|---|---|
| 急性溶血反応 | 投与開始直後〜数分 | 発熱、低血圧、血色素尿、虚脱 | 即時中止。晶質液による循環補助、エピネフリン(重度の場合) |
| 非溶血性発熱反応 | 投与中〜直後 | 体温1℃以上上昇、振戦 | 一旦中止。解熱後に速度を落として再開可 |
| 蕁麻疹・アナフィラキシー | 投与中 | 顔面浮腫、嘔吐 | 中止。Diphenhydramine 1〜2 mg/kg IM。ショック徴候があればエピネフリン 0.01 mg/kg IV |
| 循環血液量過多 | 大量・急速投与時 | 頻呼吸、肺水腫 | 中止。フロセミド 1〜2 mg/kg IV。猫は特にリスクが高い |
猫の輸血は犬とは根本的にリスクプロファイルが異なる。