「元気食欲が全くない」糖尿病猫 ── インスリン欠乏と極度の脱水。輸液→K補正→インスリンという順番を守ることが生死を分ける。早すぎるインスリンは致死的低カリウム血症を招く。
DKAはインスリン欠乏により肝臓でのケトン体(β-ヒドロキシ酪酸、アセト酢酸)産生が亢進し、重度の代謝性アシドーシスと脱水をきたす内分泌の緊急疾患。治療の三大原則は「① 輸液」「② 電解質補正(K・P)」「③ インスリン」の順番を守ること。0.9% NaClで脱水補正しながらKClを添加。来院時K値が「正常」でも全身のK総量は著しく欠乏しているため、インスリン投与はK>3.0-3.5 mEq/Lかつ循環改善後(通常2-6時間後)まで待つ。レギュラーインスリン(RI)CRI 0.05-0.1 U/kg/hr(猫では低用量から)。血糖<250 mg/dLでインスリンを継続しつつ2.5-5% Dextroseを添加。P<1.5 mg/dLで溶血性貧血リスクあり→リン酸カリウムで補充。重炭酸塩はpH<7.0の極端な場合のみ。
| 時間経過 | アクション | 目標・注意点 |
|---|---|---|
| 来院直後〜2-6時間 | 輸液+電解質補正 | 0.9% NaClで脱水補正。KCl添加。まだインスリンは開始しない |
| K値安定後(2-6h後) | RI投与開始 | CRI 0.05-0.1 U/kg/hr または IM (0.2 U/kg→0.1 U/kg q1-2h)。血糖を50-75 mg/dL/hrペースで緩やかに下げる |
| 血糖値<250 mg/dL | Dextrose添加 | 輸液に2.5-5% Dextroseを添加。RIはケトン消失まで止めない |
| ケトン消失・食欲回復 | 皮下インスリンへ移行 | Glargine等の長時間作用型へ切り替え |
| ❌ 旧来 | ✅ 最新 |
|---|---|
| 来院直後にインスリンを打つ | まず輸液とK補正が先。インスリンはKを細胞内に押し込み、致死的な低K血症を招く |
| 血糖が下がったらインスリンを止める | ケトン産生を止めるためインスリンは継続し、Dextroseを補給 |
| アシドーシスに重炭酸塩を投与 | paradoxical CNS acidosisのリスク。通常は輸液とインスリンで自然に改善させる(pH<7.0のみ慎重に検討) |
| 脱水が改善したら皮下インスリン | DKA中の皮下投与は吸収が不安定。ケトン消失・経口摂取再開後に移行 |
来院時のK値が正常でも、アシドーシスと高浸透圧によってKが細胞外にシフトしているだけ。全身のK総量は著しく枯渇している。インスリンを投与するとKが細胞内に急速に取り込まれ、筋力低下・腹臥位(ventroflexion: 猫に特徴的な頭部下垂)・呼吸筋麻痺が起こる。
| 血清K (mEq/L) | KCl添加量 (mEq/L) | 最大投与速度 |
|---|---|---|
| >3.5 | 20 | 0.5 mEq/kg/hr(急速ボーラス等での制限超えに注意) |
| 3.0 – 3.5 | 40 | 0.5 mEq/kg/hr |
| 2.5 – 3.0 | 60 | 0.5 mEq/kg/hr |
| <2.5 | 80 | 0.5 mEq/kg/hr(心電図モニタリング必須) |
| 方法 | プロトコル | Note |
|---|---|---|
| CRI法(推奨) | 0.9% NaCl 250mLにRI 50U添加(=0.2 U/mL)→ 0.05-0.1 U/kg/hr | 猫は0.05 U/kg/hrから。独立ラインでシリンジポンプ投与 |
| IM法(代替) | 初回 0.2 U/kg IM → 以後 0.1 U/kg IM q1-2h | 脱水中はSC不可(吸収不安定)。シリンジポンプ未使用時 |
DKAの治療目標は血糖値の正常化ではなく、ケトン体の消失である。インスリンを止めると肝臓でのケトン産生が再開する。
DKAは「何かがインスリンの効きを悪くした結果」起こることが多い。以下を積極的に検索すること:
糖尿病の猫ちゃんでも、膵炎や感染症などをきっかけにインスリンの効きが急に悪くなり、体の中に毒素(ケトン体)が溜まることがあります。これが「ケトアシドーシス」で、緊急の入院治療が必要です。