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🎯 結論

  • 敗血症は「感染に対する宿主の制御不能な反応による生命を脅かす臓器障害」であり、早期認識と初期蘇生の速度が予後を大きく左右する。
  • 犬のSIRS基準(体温・心拍数 >120・呼吸数・WBCの4項目中2つ以上)と猫のSIRS基準は数値が異なり、特に猫は「徐脈(<140 bpm)」を示す点が犬と大きく異なる。
  • Surviving Sepsis Campaignの原則に基づき、診断後1時間以内の広域スペクトル抗菌薬投与積極的輸液蘇生(犬: 60-90 mL/kg、猫: 45-60 mL/kg)が推奨される。
  • 感染源のコントロール(source control)が根本治療であり、支持療法と並行して感染巣の特定・ドレナージを行う。

📖 詳細解説

敗血症(sepsis)とは、感染に対する宿主の免疫応答が制御不能となり、自身の組織を傷害して臓器障害を引き起こす症候群である。全身性炎症反応症候群(SIRS)に感染が合併した状態として認識される。進行すると敗血症性ショック(septic shock)に至り、輸液蘇生に反応しない持続的低血圧と組織低灌流を引き起こす。

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犬は以下の4項目のうち 2つ以上 を満たした場合にSIRSと判定される:

パラメータ 異常値
体温 発熱(>39.2℃)または低体温(<37.8℃)
心拍数 >120 bpm
呼吸数 >20回/分(またはPaCO2 < 30mmHg)
WBC >16,000/μL または <6,000/μL、または桿状核球 >3%

犬の敗血症初期には、消化器症状(嘔吐・下痢)、嗜眠、意識変容がみられることがある。Hyperdynamic phase(過動態相)では粘膜の紅潮(brick red mucous membranes)と弾発脈(bounding pulses)が特徴的。

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猫のSIRS基準は犬と同じ4項目で構成されるが、数値が異なり認識がより困難である。以下の項目のうち 2つまたは3つ以上 を満たす場合にSIRSと判定される:

パラメータ 異常値
体温 >39.7℃(103.5°F)または <37.8℃(100°F)
心拍数 <140 bpm(徐脈) または >225 bpm
呼吸数 >40 回/分
WBC >19,500/μL または <5,000/μL、または桿状核球 >5%

猫の最大の特徴は、犬のような過動態相(頻脈・粘膜紅潮)を呈さず、むしろ徐脈・低体温・低血圧を示すことが多い点である。初期の微妙な症状は食欲低下、嗜眠、隠れる行動にとどまり、容易に見逃される。

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SIRS基準は臨床的に有用なスクリーニングツールであるが、単独使用では健康犬猫と疾患犬猫の鑑別能力に限界がある(特異度が低い)。SIRS基準を満たすこと自体が敗血的であることを意味するわけではなく、「感染の確証または高い疑い」との組み合わせで初めて敗血的と評価する必要がある。

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Surviving Sepsis Campaign(SSC)の原則を獣医療に適用したアプローチが推奨される。

輸液蘇生

積極的な静脈内輸液により循環血液量を回復し、組織灌流を改善する。

  • : 等張性晶質液のショック用量は 60-90 mL/kg。20 mL/kgのボーラスを15-20分で投与し、各ボーラス後に再評価。
  • : 45-60 mL/kg。ただし猫は体液過負荷に陥りやすく、小容量ボーラス(5-10 mL/kg)で慎重に投与し頻繁に再評価する。

抗菌薬の早期投与

診断後(認識後)1時間以内に広域スペクトル抗菌薬を静脈内に投与する。培養結果が判明した時点で感受性に基づきde-escalation(狭域化)を行う。

血液培養

抗菌薬投与前に血液培養を実施。ただし培養結果を待って抗菌薬投与を遅延させてはならない。

感染源のコントロール(Source Control)

外科的ドレナージ、デブリードメント、異物除去など、感染源の直接的な排除が根本治療として不可欠。

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  • 血圧管理: 輸液蘇生に反応しない低血圧にはノルエピネフリン等の昇圧剤を使用。
  • 疼痛管理: 感染巣に伴う疼痛に対する適切な鎮痛。
  • 栄養サポート: 安定後は早期の経腸栄養を開始。
  • 酸素療法: 低酸素血症に対する酸素補充。
  • モニタリング: バイタルサイン、尿量、乳酸値、臓器機能の継続的モニタリング。
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項目
体温上限 >39.2℃ >39.7℃
頻脈 >120 bpm >225 bpm
徐脈 基準に含まず <140 bpm(特徴的)
呼吸数 >20(またはPaCO2<30) >40
WBC上限 >16,000 >19,500
桿状核球 >3% >5%
典型的な初期相 Hyperdynamic(紅潮・弾発脈) 徐脈・低体温・低血圧
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「敗血症ってどういう病気ですか?」

体の中に侵入した細菌に対して免疫が過剰反応を起こし、全身の臓器を傷つけてしまう非常に重篤な状態です。わかりやすく言うと、「体を守るはずの免疫が暴走して、自分自身を攻撃してしまう」状態です。早期に適切な抗生物質と点滴治療を開始することが、救命率を大きく左右します。

「入院が長引くと聞いたのですが…」

敗血症は全身の臓器に影響を及ぼす病気ですので、状態が安定するまでICU管理が必要になることが多いです。24時間体制での点滴、抗生物質、臓器サポートが必要で、数日〜1週間以上の入院になることもあります。ただし、早期に発見して治療を始められたケースでは回復率は良好です。
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