ACVIM 2024コンセンサスに基づく診断基準と治療戦略。出血している犬にまず何をするか。
ITPは犬で最も多い後天性出血障害。 血小板数<20,000/μLはITPを強く支持(>50,000では他疾患の検討を)。 ACVIM 2024ガイドラインでは、免疫抑制量のプレドニゾロンが第一選択。 臨床的に有意な出血がある場合はビンクリスチン0.02mg/kg IV単回を初日から併用 → 血小板回復を加速し入院日数を短縮。 プレドニゾロンに5〜7日で反応しない、副作用が重い、減薬中に再発する場合はミコフェノール酸モフェチル(MMF)の追加を検討。 治療のゴールは血小板≥100,000/μLで出血なし。 ABCB1(MDR1)変異犬種にはビンクリスチン禁忌 → 事前に品種を確認。
graph TD
A["ITPと診断"] --> B{"臨床的出血の有無"}
B -->|"あり"| C["プレドニゾロン + ビンクリスチン"]
B -->|"なし"| D["プレドニゾロン単独"]
C --- E["注意 ABCB1変異犬種はビンクリスチン禁忌"]
C --> F{"5-7日後 血小板再評価"}
D --> F
F -->|"上昇あり"| G["治療目標達成 PLT 10万以上"]
F -->|"反応不良 副作用重篤"| H["MMF追加を検討"]
G --> I["減薬プロトコル開始"]
I --> J{"減薬中の再発"}
J -->|"あり"| H
J -->|"なし"| K["治療終了または低用量維持"]
H --> G
| 血小板数 | 解釈 | 次のアクション |
|---|---|---|
| <20,000/μL | ITPを強く支持(偽性血小板減少を塗抹で除外後) | 治療開始 + 原因疾患の検索を並行 |
| 20,000〜50,000/μL | ITPの可能性あるが、他の原因も十分に検討 | 骨髄検査・感染症検査・画像を検討 |
| 50,000〜100,000/μL | 原発性ITP単独での低下としてはやや高い、二次性の検索を | DIC・感染・腫瘍・薬剤性を積極的に除外 |
| >100,000/μL | 初発診断では原発性ITPをほぼ除外 | 他の血小板消費性疾患を検索 |
⚠️ 重要: 自動血球計算器による血小板数は必ず塗抹で確認する。EDTA依存性偽性血小板減少(猫で特に多い)や血小板凝集で偽低値になることがある。
| ❌ 旧来 | ✅ 最新 |
|---|---|
| ITPの診断にはまず骨髄検査 | 血小板<20,000/μL + 塗抹で確認 → 骨髄検査は必須ではない(治療反応不良時や非典型例で検討) |
| ビンクリスチンは最終手段 | 出血がある場合は初日からビンクリスチンを推奨(ACVIM 2024)。血小板回復を加速する |
| 第2免疫抑制薬は反応不良時のみ | 25kg以上の大型犬では早期MMF追加でステロイド減量を早める戦略が推奨 |
| 血小板数が低ければ予後不良 | 初期の血小板数は予後予測因子にならない(ACVIM 2024)。治療反応を見て判断 |
| 薬剤 | 用量 | 効果発現 | 主な副作用 |
|---|---|---|---|
| MMF | 10〜20mg/kg PO BID | 5〜14日 | 下痢(用量依存性)、骨髄抑制 |
| アザチオプリン | 2mg/kg PO SID(隔日維持) | 2〜4週間 | 骨髄抑制、肝毒性、膵炎 ⚠️猫には禁忌 |
| シクロスポリン | 5〜10mg/kg PO BID | 2〜4週間 | 消化器症状、歯肉増殖 |
⚠️ 日本の注意: MMF(セルセプト®)は人の臓器移植用として流通。獣医師の裁量で使用。後発品も利用可能で費用を抑えられる。
| 段階 | CBC頻度 | 注意点 |
|---|---|---|
| 治療開始〜PLT安定 | 2〜3日ごと | 5〜7日で反応なければ第2薬追加を検討 |
| 減薬開始〜維持量到達 | 減薬ごとに1〜2週後 | PLT<100,000に低下 → 前の用量に戻す |
| 離脱後 | 月1回 × 3ヶ月 → 3ヶ月ごと × 1年 | 再発率は約20〜30% |