パグ、フレンチ・ブルドッグ、イングリッシュ・ブルドッグ、ボストン・テリア、シーズーなどの短頭種は、以下の解剖学的異常を複合的に有する。
これらの異常は慢性的な陰圧性気道損傷をもたらし、喉頭浮腫や咽頭粘膜の肥厚を引き起こす。麻酔による上気道筋の弛緩は、すでに脆弱な気道をさらに狭窄させるため、短頭種の麻酔死亡率は非短頭種と比較して有意に高いことが報告されている。
短頭種は食道裂孔ヘルニアや胃食道逆流の発生率が高く、麻酔中の逆流・誤嚥性肺炎リスクが上昇する。
過度の鎮静は上気道の筋緊張を低下させ閉塞を悪化させるため、α2アゴニスト(メデトミジン等)の高用量単独使用は避ける。低用量のオピオイドを中心とした穏やかな鎮静が推奨される。
短頭種は機能的残気量が少なく、無呼吸に対する予備が極めて限られている。導入前に必ず3〜5分間のプレオキシゲネーション(100%酸素によるマスク酸素化)を実施する。
プロポフォールを力価滴定(effect-site titration)で緩徐に投与し、速やかに気管挿管する。急速なボーラス投与は無呼吸を誘発するため避ける。気管チューブは気管低形成を考慮してやや小さめのサイズを数本用意しておく。挿管困難に備えて、気管切開キットを手元に準備しておくことが強く推奨される。
短頭種の麻酔関連死亡の大半はリカバリー期に発生する。以下の管理を徹底する。
BOAS矯正手術(軟口蓋切除術、外鼻孔拡大術)の術後は、手術部位の腫脹が気道狭窄をさらに悪化させるリスクがある。術後24〜48時間は入院管理とし、気管切開の準備を常にしておくことが推奨される。