輸液は「薬」と同じ。正しく使えば救命し、誤れば害になる。2024年AAHA新ガイドラインに基づく個別化輸液戦略。
蘇生には等張晶質液のボーラス投与が第一選択(犬15〜20mL/kg、猫10〜15mL/kg)。「ショック量を一気に入れる」時代は終わり、少量ボーラス→再評価→追加を繰り返すのが現在の標準。晶質液 vs 膠質液のどちらが優れるかのエビデンスは未確立。生理食塩水の大量投与は高クロール性代謝性アシドーシスのリスク → 緩衝晶質液(乳酸リンゲル等)が推奨。猫は犬より過剰輸液に弱い。
graph TD
A["ショック兆候あり"] --> B["等張晶質液ボーラス投与"]
B -->|"犬"| C["15-20 mL/kg 15-30分"]
B -->|"猫"| D["10-15 mL/kg 15-30分"]
C --> E["灌流指標を再評価"]
D --> E
E --> F{"灌流改善あり"}
F -->|"はい"| G["維持輸液へ移行"]
F -->|"いいえ"| H{"過剰輸液兆候あり"}
H -->|"いいえ"| I["追加ボーラス投与 同量"]
H -->|"はい 肺水腫等"| J["昇圧剤検討"]
I --> E
| 犬 🐕 | 猫 🐱 | |
|---|---|---|
| 等張晶質液 | 15〜20 mL/kg 15〜30分で投与 |
10〜15 mL/kg 15〜30分で投与 |
| 高張食塩水 | 4〜7 mL/kg 約10分 |
3〜4 mL/kg 約10分 |
| 膠質液(HES(ヒドロキシエチルデンプン: 人工膠質液)等) | 5 mL/kg 5分で投与、反復可 |
2〜5 mL/kg 5分で投与 |
| 経験的ショック量 (参考値) |
90 mL/kg (1/4〜1/3ずつ投与) |
50 mL/kg (より少量ずつ) |
※ ショック量を一括投与しない。ボーラス → 灌流評価 → 追加判断を繰り返す
| ❌ 旧来 | ✅ 最新(2024 AAHA) |
|---|---|
| ショック量を一括投与 | 少量ボーラス+再評価を反復 |
| 生食で何でもOK | 大量生食は高Cl性アシドーシスのリスク → 緩衝液推奨 |
| 維持にも等張液を使用 | 維持輸液には低張液を推奨(等張液の維持使用は電解質異常の原因に) |
| 膠質液は晶質液より優位 | 優位性は未証明+AKI(急性腎障害)・凝固異常リスクの報告あり |
「とりあえず生食」はやめる。第一選択を乳酸リンゲルまたはPlasma-Lyteに。生食が適するのは高Ca血症・低ナトリウム血症・代謝性アルカローシスなどの限られた状況。
「猫は小さな犬ではない」。輸液速度を機械的に体重換算しない。5 mL/kgのボーラス後に必ず呼吸状態を再評価。
ボーラス投与後15〜30分で再評価。改善していれば維持輸液に移行。改善なしなら追加ボーラスまたはカテコラミン(ドーパミン/ノルエピネフリン)を検討。