ショックは「組織への酸素供給が組織の酸素需要を満たせない状態」であり、最終的に臓器不全に至る。輸液蘇生の目的は循環血液量の回復と組織灌流の改善にある。
ショックは大きく4つに分類される:
| タイプ | 例 |
|---|---|
| 循環血液量減少性 | 出血、脱水、第三腔液貯留 |
| 分布異常性 | 敗血症、SIRS、アナフィラキシー |
| 心原性 | 心タンポナーデ、重度不整脈、弁膜症 |
| 閉塞性 | GDV、肺血栓塞栓症、緊張性気胸 |
いずれのタイプでも初期対応に輸液は重要だが、心原性ショックでは過剰輸液が致命的となりうるため、カテゴリーの鑑別が不可欠である。
乳酸リンゲル液(LRS/Hartmann液)や0.9%生理食塩水が第一選択。
注意: 20-50 mL/kgを初期投与とするガイドラインもあるが、いずれの場合も「一度に全量を投与しない」原則を守り、各ボーラス後の再評価が必須。
猫が犬と異なる理由:
大分子量のポリマー(ヒドロキシエチルスターチ:HES等)を含み、タンパク質結合力により血管内に水分を保持する。
| 種 | ボーラス量 | 24時間上限 |
|---|---|---|
| 犬 | 5-10 mL/kg | ~20 mL/kg |
| 猫 | 1-5 mL/kg | 10-20 mL/kg |
近年、ヒト医療におけるRCT(6S trial, CHEST trial)で敗血症患者へのHES使用と腎障害リスクの関連が示されて以降、獣医療でも膠質液の使用は慎重になっている。特に敗血症や全身性炎症反応を伴うショックでは、晶質液ベースの蘇生が推奨される傾向にある。
低アルブミン血症(<2.0 g/dL)を伴う症例や、大量の晶質液投与に反応しないケースでは依然として選択肢となりうる。
3-7.5%の高張食塩水は、間質・細胞内から血管内への急速な水分移動を引き起こし、少量で迅速な血管内容量拡張を達成する。
| 種 | 投与量 | 投与方法 |
|---|---|---|
| 犬 | 4-5 mL/kg | 10-15分かけてIV |
| 猫 | 2-4 mL/kg | 10-15分かけてIV |
適応: 頭部外傷(脳浮腫軽減)、急速な血管内容量拡張が必要な場面。
禁忌: 高ナトリウム血症、重度脱水(間質から水分を引き抜くため悪化)、未コントロールの出血。
高張食塩水投与後は等張性晶質液による間質液量の補充が必要。
蘇生の効果判定に用いるパラメータ:
| パラメータ | 目標 |
|---|---|
| 心拍数 | 正常範囲(犬80-120, 猫160-220) |
| CRT | < 2秒 |
| 粘膜色 | ピンク |
| 血圧(MAP) | > 65-80 mmHg |
| 尿量 | > 1 mL/kg/h |
| 乳酸値 | < 2.5 mmol/L |
| 意識レベル | 改善 |
蘇生のエンドポイントを意識し、「もう少し」の追加投与が体液過負荷を引き起こさないよう常に注意する。