CKD(慢性腎臓病)の食事療法は、最も強力なエビデンスを持つ治療介入の一つである。腎臓サポート食の導入により、自然発生CKDにおける生存期間中央値が通常食群の2倍以上(約13〜16ヶ月延長)というデータが存在する。食事療法の核心はリンの制限であり、IRISステージ別に血清リンの目標値が設定されている(ステージ2: 2.7〜4.6 mg/dL、ステージ3: 2.7〜5.0 mg/dL、ステージ4: 2.7〜6.0 mg/dL)。食事のみで血清リンが目標に達しない場合はリン吸着剤(炭酸カルシウム 60〜100 mg/kg/day、水酸化アルミニウム 30〜90 mg/kg/day)を食事に混ぜて投与する。また特に猫のCKDでは20〜30%に低カリウム血症が発生し、経口グルコン酸カリウム 2〜4 mEq/cat PO q12〜24hで補正する。
| ❌ 旧来 | ✅ 最新 |
|---|---|
| 腎臓食は「タンパク質制限」が主目的 | 腎臓食の最も重要な成分はリンの制限。タンパク質制限は尿毒素軽減に寄与するが、過度な制限は筋肉量低下・低栄養を招く |
| リン吸着剤は腎臓食と「別に」投与する | リン吸着剤は食事と一緒に(混ぜて)投与しなければ効果がない。食間投与では腸管内のリンと結合できない |
| 低カリウムは「ちょっと元気がない」程度 | 猫の低K⁺血症は筋力低下(頸部腹側屈曲 / ventroflexion)、倦怠感、不整脈、腎尿細管障害の悪化を引き起こし、CKDの進行を加速させる |
| 成分 | 通常食との違い |
|---|---|
| リン | 大幅に制限(最も重要) |
| タンパク質 | 適度に制限(過度にならない範囲で) |
| ナトリウム | 制限(高血圧の予防) |
| カリウム | 強化(猫のCKDでの低K⁺予防) |
| EPA/DHA(オメガ3脂肪酸) | 強化(腎臓の炎症・線維化を抑制) |
| カロリー密度 | やや高め(少量で必要カロリーを摂取できるように) |
| IRISステージ | 血清リン目標値 | 管理戦略 |
|---|---|---|
| ステージ1 | 正常範囲内を維持 | 食事管理のみ |
| ステージ2 | 2.7〜4.6 mg/dL | 腎臓サポート食を導入。達成できなければリン吸着剤追加 |
| ステージ3 | 2.7〜5.0 mg/dL | 腎臓サポート食 + リン吸着剤。多くの症例で吸着剤が必要 |
| ステージ4 | 2.7〜6.0 mg/dL | 腎臓サポート食 + リン吸着剤(高用量が必要になることが多い) |
💡 臨床Tips
- 食事変更は段階的に。CKDの猫は嗜好性にうるさいことが多い。7〜14日かけて現在のフードに少しずつ腎臓食を混ぜていく「移行期間」が成功のカギ。
- 食事を拒否する場合: まず食べることが最優先。「腎臓食を食べないから通常食に戻す」のが正しいこともある。食べないこと自体が最大のリスク(特に猫では肝リピドーシス)。
腎臓サポート食を2〜4週間導入しても、血清リンがIRISステージ別の目標値を超える場合に開始する。
| 薬剤 | 用量 | 利点 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 炭酸カルシウム | 60〜100 mg/kg/day PO(食事に混合) | 入手容易、安価 | 高Ca血症のリスク。Ca × P 積が70を超えないようにモニタリング |
| 水酸化アルミニウム | 30〜90 mg/kg/day PO(食事に混合) | 効果が高い | 長期使用でのアルミニウム蓄積の懸念(臨床的には稀) |
| 炭酸ランタン | 犬: 30〜90 mg/kg/day | カルシウムを含まない | 高価。嘔吐の副作用あり |
| セベラマー | 30〜50 mg/kg q8h | カルシウムを含まない | 高価。消化管副作用 |
⚠️ 必ず食事と一緒に投与。リン吸着剤は腸管内で食事中のリンと結合して吸収を阻害する薬剤であるため、食間に単独投与しても効果はない。
| 状態 | 治療 |
|---|---|
| 軽度(K⁺ 3.0〜3.5 mEq/L) | グルコン酸カリウム 2〜4 mEq/cat PO q12〜24h |
| 中等度(K⁺ 2.5〜3.0 mEq/L) | 上記に加え、補正速度に注意しながらIV補充も検討 |
| 重度(K⁺ < 2.5 mEq/L、臨床症状あり) | 入院管理。輸液にKClを添加(0.5 mEq/kg/hr を超えない速度でIV) |
💡 臨床Tips
- 腎臓サポート食の多くはカリウムが強化されているが、それでも不十分なケースは少なくない。血液検査でモニタリングし、低K⁺が持続する場合は経口カリウム製剤を追加する。
- 経口製剤の嗜好性が悪い場合は粉末タイプを少量の水で溶いてシリンジで投与するか、フードに均一に混ぜる。