猫の特発性膀胱炎(Feline Idiopathic Cystitis: FIC)は、猫の下部尿路疾患(FLUTD)の中で最も頻度の高い原因であり、特に10歳以下の猫では全症例の60〜75%を占める。「特発性」の名が示す通り、明確な単一原因は特定されていないが、ストレス応答系の異常(視床下部-下垂体-副腎軸の過活動)、膀胱粘膜のグリコサミノグリカン(GAG)層の欠損、および神経性炎症の三者が相互に関与する複合病態と考えられている。
FICは積極的に診断できる単一の検査法がなく、除外診断によって到達する。以下を除外する必要がある:
尿検査では血尿・蛋白尿が認められるが、尿培養は陰性(無菌性)であることがFICの特徴である。
FICの治療において最もエビデンスが強いのは、多面的環境改善(Multimodal Environmental Modification: MEMO)である。
FICの再発予防において、水分摂取の増加は環境改善と並んで最も重要な介入である。
FICの薬物療法はあくまで補助的であり、環境改善と食事管理を実施した上での追加手段である。
FICは自然寛解率が高く(急性エピソードの約85%は1-2週間で自然軽快)、そのため薬物療法の有効性評価が困難な疾患でもある。しかし、MEMOを実施しない場合の1年以内の再発率は約40〜50%と高い。MEMOの継続的実施により再発率を有意に低下させることができる。