📋 👑 すべて表示

🎯 結論

  • 猫の上部尿路結石の大半はシュウ酸カルシウム(CaOx)結石であり、閉塞性の上部尿路結石に溶解療法を試みるべきではないとされる [1][8]。
  • 診断は閉塞部より近位の水腎症+水尿管の確認が基本で、腎盂拡張の程度だけでは判定しない [1]。
  • 内科管理(利尿輸液など)は24〜72時間の範囲で検討されるが成功率は低く、溢水の監視が必須である [1]。
  • ACVIMコンセンサスは猫の閉塞性尿管結石にSUB(皮下尿管バイパス)または尿管ステントを推奨する [1]。
  • 一方で、SUBの重大合併症の多さ [5] や、尿管手術とステント留置で生存期間に差がなかった報告 [3] もあり、腎瘻チューブで減圧してから尿管切開に臨む段階的治療も臨床現場で期待の高い選択肢である [3][5][6]。

📖 詳細解説

猫における尿管結石

猫の上部尿路結石はCaOx結石が大半を占める [8]。CaOx結石は食事療法や内科的治療で溶解できず、閉塞性の上部尿路結石では溶解を試みるべきではないとされる [1]。

結石組成と治療方針

結石組成は治療方針の判断に影響する [1]。CaOx結石の再発予防は、尿濃度を下げる(高水分食)、尿の酸性化を避ける、過剰なタンパク質を避けることが推奨されている [1]。

🔒この先の詳細解説は PawMedicalのNote で発信しています

臨床症状

  • 急性の場合: 食欲低下、嘔吐、腹部痛、元気消失
  • 片側閉塞: 対側の腎臓が代償するため、血液検査上の腎数値上昇が乏しく見逃されやすい
  • 両側閉塞: 急速な高窒素血症、乏尿〜無尿、高カリウム血症 → 致死的な不整脈のリスク

画像診断

検査 所見 ポイント
腹部超音波 水腎症、閉塞部より近位の水尿管 腎盂拡張の程度にかかわらず、閉塞性結石より近位の水腎症+水尿管で尿管閉塞と診断する。腎盂拡張が5mm未満のときは、水尿管を伴わない限り慎重な画像評価が必要 [1]
腹部X線 尿管内の結石像 超音波で閉塞病変が見えない場合に追加する [1]

血液検査

  • Cre、BUN、SDMA: 腎機能評価の基本
  • 高カリウム血症: 両側閉塞では致死的不整脈のリスクがあり、即座の対応が必要
  • 尿比重、UPC: 腎機能の詳細評価に使用
🔒この先の詳細解説は PawMedicalのNote で発信しています

尿管閉塞は即時対応が必要 [1]

内科的管理とその限界

  • 閉塞性尿管結石の内科治療が奏功することはまれで、状態の安定した症例に24〜72時間の範囲で検討される。飼い主には失敗率が高いことを伝えておく [1]
  • 内容は利尿輸液と、耐えられればマンニトール持続投与。α遮断薬や三環系抗うつ薬は改善の逸話的報告にとどまる [1]
  • 輸液は溢水を防ぐため厳密に監視する。持続する乏尿・無尿、高カリウム血症、進行する高窒素血症や腎盂拡張があれば、内科管理を続けず減圧処置へ移る [1]

術前安定化と一時的減圧(腎瘻)

  • 高カリウム血症や重度の高窒素血症がある症例では、術前の安定化が必要となる。血液透析のほか、腎瘻チューブ(nephrostomy tube)による一時的な尿路変更が選択肢となる [6][7]
  • ロック付きピッグテール腎瘻カテーテルを用いた報告(猫16例・犬4例)では、留置期間の中央値は7日で、全例で腎盂の減圧が得られた。合併症は尿漏れ1例、自宅での自己抜去1例であった [6]
  • 来院時クレアチニンが440 μmol/L(約5 mg/dL)以上の猫は、SUB留置後の生存期間中央値が530日と、それ未満の949日より短かった [5]

外科的治療

ACVIMコンセンサスの推奨

猫の閉塞性尿管結石にはSUBまたは尿管ステントでの管理が推奨されている [1]。

皮下尿管バイパスシステム(SUB)

腎臓と膀胱を人工的なチューブでバイパスする方法。

  • 成績: 猫95例(130デバイス)の報告で、院内死亡は約10%、重大な合併症は48%(大半は退院後)、軽微な合併症は19%。全体の生存期間中央値は2年を超えた [5]
  • 留意点: 術後の尿路感染が95例中27例でみられ [5]、デバイスのフラッシングや画像検査を含む長期管理が必要となる
尿管ステント留置

閉塞部位にステントを留置し、尿管内腔を確保する方法。

  • 成績: 猫69例(79尿管)で留置成功率95%、周術期死亡率7.5%。27%でステント交換が必要となった(狭窄、移動など) [2]
  • 留意点: ステント留置猫では、慢性的な下部尿路症状と慢性尿路感染がステントなしの尿管手術より有意に多かった [3]
尿管切開・吻合術(Ureterotomy/Ureteroneocystostomy)

結石を外科的に摘出する方法。サージカルルーペまたはマイクロサージャリーの技術が必要。

  • 成績: 猫117例の比較で、ステントを使わない尿管手術の周術期合併症は3%(ステント群14%)、周術期死亡率は8%(同9%)で、再閉塞率・生存期間中央値に差はなかった [3]
  • 留意点: 尿管切開のみの群はステント群より退院時に高窒素血症が残りやすく、術後に腹水が出た猫は生存退院率が低かった [4]

段階的治療という選択肢

腎瘻で先に減圧し、腎数値が下がってから尿管切開に臨む段階的治療は、来院時の腎数値が高いほど予後が悪いというデータ [5] と、尿管手術の成績がステント留置に劣らないというデータ [3] から、臨床現場で期待の高い選択肢である。ただし、段階的治療とSUB・ステントを直接比較した研究は現時点では見当たらない。

🔒この先の詳細解説は PawMedicalのNote で発信しています
  • 術後の腎機能モニタリング(Cre推移)は退院後も継続
  • 再閉塞は約2割でみられるため(術式による差はない)、定期的な画像検査で追跡する [3]
  • SUB留置例では術後の尿路感染が多いため [5]、尿培養とデバイスのフラッシングを含む管理を継続する
  • CaOx結石の再発予防: 高水分食で尿濃度を下げる。高ナトリウムのドライフードを高水分食の代わりにすることは推奨されない [1]
🔒この先の詳細解説は PawMedicalのNote で発信しています

Q. 「尿管結石は薬で溶かせませんか?」

猫の尿管結石のほとんどはシュウ酸カルシウムという種類の石で、残念ながら薬や食事療法で溶かすことはできません。膀胱にできるストルバイト結石とは種類が違います。そのため、閉塞を解除するためには処置や手術が必要になることがほとんどです。

Q. 「すぐに手術しないといけないのですか?」

腎臓の数値がとても高い場合は、まず腎臓にたまった尿を体の外へ流す細い管(腎瘻チューブ)を入れて、数値を下げてから手術に進むことがあります。どの方法が合うかは、腎臓の状態や石の位置によって変わります。

Q. 「手術後、また石ができることはありますか?」

残念ながら、シュウ酸カルシウム結石は体質的にできやすい子がおり、再発する可能性はあります。予防のためにウェットフードなどで水分摂取を増やすこと、定期的なエコー検査で早期発見することが大切です。SUBという器具を入れた場合は、定期的なメンテナンス(フラッシング)も必要になります。

Q. 「片方の腎臓がダメになっても大丈夫ですか?」

片方の腎臓の機能が十分であれば、もう片方がダメージを受けても日常生活は可能です。ただし、残った腎臓に何か問題が起きたときの予備がなくなりますので、定期的な血液検査と尿検査で残った腎臓の健康状態をチェックし続けることが大切になります。
🔒この先の詳細解説は PawMedicalのNote で発信しています
  1. Lulich JP, Berent AC, Adams LG, et al. ACVIM Small Animal Consensus Recommendations on the Treatment and Prevention of Uroliths in Dogs and Cats. J Vet Intern Med, 2016;30(5):1564-1574.
  2. Berent AC, Weisse CW, Todd K, et al. Technical and clinical outcomes of ureteral stenting in cats with benign ureteral obstruction: 69 cases (2006-2010). J Am Vet Med Assoc, 2014;244(5):559-576.
  3. Wormser C, Clarke DL, Aronson LR. Outcomes of ureteral surgery and ureteral stenting in cats: 117 cases (2006-2014). J Am Vet Med Assoc, 2016;248(5):518-525.
  4. Culp WT, Palm CA, Hsueh C, et al. Outcome in cats with benign ureteral obstructions treated by means of ureteral stenting versus ureterotomy. J Am Vet Med Assoc, 2016;249(11):1292-1300.
  5. Kulendra NJ, Borgeat K, Syme H, et al. Survival and complications in cats treated with subcutaneous ureteral bypass. J Small Anim Pract, 2021;62(1):4-11.
  6. Berent AC, Weisse CW, Todd KL, et al. Use of locking-loop pigtail nephrostomy catheters in dogs and cats: 20 cases (2004-2009). J Am Vet Med Assoc, 2012;241(3):348-357.
  7. Hardie RJ, Kyles AE. Management of ureteral obstruction. Vet Clin North Am Small Anim Pract, 2004;34(4):989-1010.
  8. Palm CA, Westropp JL. Cats and calcium oxalate: strategies for managing lower and upper tract stone disease. JFMS, 2011;13(9):651-660.