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🎯 結論
graph TD
    A["食欲不振 3-7日 HL疑い"] --> B["入院評価"]
    B --> B1["輸液 電解質補正"]
    B --> B2["血液検査 K P Mg"]
    B2 --> C{"低K P Mg あり?"}
    C -->|"Yes"| C1["電解質補正"]
    C -->|"No"| D{"嘔吐あり?"}
    D -->|"Yes"| D1["嘔吐制御"]
    D -->|"No"| E["E-tube設置"]
    C1 --> E
    D1 --> E
    E --> F["栄養開始 Day1"]
    F --> F1["RER 1/3給餌"]
    F1 --> G["栄養増量 Day2"]
    G --> G1["RER 2/3給餌"]
    G1 --> H["栄養維持 Day3"]
    H --> H1["RER 100%給餌"]
    H1 --> I{"電解質 嘔吐Moni"}
    I -->|"安定"| J["退院 E-tube指導"]
    J --> K["在宅経管栄養 4-8W"]
    K --> L{"3日自力摂食?"}
    L -->|"Yes"| M["E-tube抜去"]
    B --> N["原疾患検索 治療"]
    N --> K

猫の肝リピドーシス(HL: Hepatic Lipidosis)は食欲不振が3〜7日以上続くことで発症し、特に肥満猫でリスクが高い。猫特有の脂質代謝(VLDL生合成のボトルネック)により、絶食時に肝臓に中性脂肪が蓄積し肝機能障害を引き起こす。治療の柱は十分なカロリーの栄養補給であり、最も確実な方法は経食道チューブ(E-tube)の設置。適切な栄養支持を行えば生存率は約60〜80%。ただし原発性HLは約20〜40%で、残りは二次性(膵炎・IBD・リンパ腫・糖尿病などが原疾患)であるため、基礎疾患の検索と治療が同時に必要。栄養回復には4〜8週間を要することが多い。

🗺️ 肝リピドーシス ─ 治療フロー

ステップ 行動 ポイント
① 初日 輸液で脱水・電解質補正。血液検査(肝酵素・ビリルビン・K・Mg・P) 低K・低P・低Mgを必ずチェック
② 12〜24h 嘔吐制御 → 経食道チューブ設置(E-tube) E-tubeは短時間麻酔で設置可能
③ Day 1〜3 RER(安静時エネルギー要求量)の1/3から開始 → 3日かけて全量へ 急な全量投与は再給餌症候群のリスク
④ Day 3〜7 RERの100%を分割給餌(1日4〜6回) 電解質モニタリング継続。嘔吐対策
⑤ 退院 E-tube管理を飼い主に指導し退院 在宅での給餌は多くの飼い主が習得可能
⑥ 長期 自力摂食が回復したらチューブ抜去 通常4〜8週間。自力で3日連続食べたらOK

⚡ 昔の常識 vs 今のエビデンス

❌ 旧来 ✅ 最新
シリンジで口から強制給餌する シリンジによる経口強制給餌はストレス・誤嚥性肺炎のリスクが高い。経食道チューブがゴールドスタンダード
食べるまで待つ 「食べるのを待つ」は致命的。猫は3〜7日間の絶食で脂肪肝に進展しうる
脂肪肝=太った猫だけの病気 肥満猫はリスク因子だが、正常体重の猫でも発症する。二次的原因(膵炎・IBD等)を検索することが重要
肝臓が悪いので脂肪(高脂肪食)を制限する 高蛋白食が基本。猫のHLの回復には十分な蛋白質(30〜35%以上)が必要。脂肪制限は不要

📖 詳細解説

典型的なプロフィール

  • 中年〜高齢の室内飼育猫(平均7〜8歳)
  • 肥満〜過体重(BCS ≥7/9)の猫でリスク高
  • ストレスイベント(引っ越し、新しいペット、飼い主の不在等)の後の食欲不振
  • 3〜7日間以上の食欲廃絶

検査所見

項目 典型的所見 備考
ALT / ALP 中等度〜高度上昇(ALP>ALTが多い) 猫のALP高値は肝臓由来の可能性が高い(骨由来少ない)
ビリルビン 中等度〜高度上昇 → 黄疸 黄疸は診断を支持する重要な所見
K, P, Mg 低値 治療前の補正が必須。特に低Pは溶血・筋力低下の原因
凝固系 PT/APTT延長 ビタミンK依存性凝固因子↓ → ビタミンK1投与を検討
腹部超音波 肝臓の高エコー性(腎臓より高輝度) 特異度は低いが、臨床所見と合わせて診断

確定診断

  • 超音波ガイド下の肝臓細胞診(FNA)が最も安全で実用的
  • 細胞診で肝細胞内に多量の脂肪空胞(>50%の肝細胞に脂肪蓄積)を確認
  • 凝固系異常がある場合はFNA前にビタミンK1を投与(0.5〜1.5mg/kg SC)。IV投与はアナフィラキシー様反応のリスクがあるため禁忌

💊 臨床Tips

  • HLの約85%は二次性。原疾患の検索を必ず行う → 膵炎(fPLI)、IBD(エコー・生検)、リンパ腫、糖尿病、胆管炎
  • 黄疸 + 食欲不振 + 体重減少の猫 → まずHLを疑い、早期に栄養介入する判断が重要
  • 腹部エコーで膵臓の異常も同時に評価(猫のHL合併膵炎は非常に多い)
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なぜE-tubeか

  • 経鼻食道チューブ(NGチューブ): 液体のみ投与可能で不快感が強い。短期(2〜3日)用
  • 経食道チューブ(E-tube): 14〜16Frのチューブ。缶詰フード(ブレンド後)が投与可能。設置は短時間全身麻酔で10〜15分。最も推奨される方法
  • 胃瘻チューブ(PEGチューブ): 長期管理用だが設置に内視鏡が必要

E-tube設置のポイント

  • 設置部位: 左頸部(食道への経皮的アプローチ)
  • 全身麻酔(プロポフォール or アルファキサロン)下で、短時間で完了
  • 適切なチューブ長: 口から第7〜8肋骨の高さまで → 設置前に外から計測してマーキング
  • チューブの先端が胃に入りすぎないこと(嘔吐誘発のリスク)
  • 設置後のX線撮影で位置確認

在宅でのE-tube管理

  • 給餌前: 温水5〜10mLでフラッシュ(チューブ開通確認)
  • 給餌: 缶詰フードをブレンダーで滑らかにして注入。1回量は10〜15mL/kg程度。1日4〜6回に分割
  • 給餌後: 温水5〜10mLでフラッシュ(チューブ閉塞予防)
  • チューブ出口の消毒: 毎日軽くガーゼで清拭
  • ネックバンデージで固定。エリザベスカラー推奨

💊 臨床Tips

  • E-tubeの設置は一般病院で十分実施可能。最も費用対効果の高い栄養介入法
  • 飼い主が「チューブは可哀想」と抵抗することが多いが、シリンジ強制給餌のほうが猫のストレスが大きいことを説明
  • チューブ詰まりの対処: 炭酸水 or コーラを少量注入 → 30分放置 → フラッシュで解消できることがある
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RER(安静時エネルギー要求量)の計算

  • RER = 70 × (体重kg)^0.75 kcal/日
  • 簡易式(2〜30kgの動物): 30 × 体重(kg) + 70 kcal/日
  • 例: 5kgの猫 → RER = 70 × 5^0.75 ≈ 234 kcal/日

段階的増量プロトコル

日数 目標カロリー 5kgの猫の場合
Day 1 RERの1/3 約78 kcal/日
Day 2 RERの2/3 約156 kcal/日
Day 3〜 RERの100% 約234 kcal/日

フードの選択

  • 高蛋白・高カロリーの缶詰フード: Hill's a/d、ロイヤルカナン退院サポートなど
  • 蛋白含量: ME比で30〜35%以上が理想
  • 缶詰をブレンダーで均一にして、温水で適切な粘度に調整(チューブ閉塞を防ぐ)

サプリメント

  • ビタミンK1: 0.5〜1.5mg/kg SC q12h × 3回 → 凝固異常がある場合。IV禁忌(アナフィラキシーリスク)
  • ビタミンB群(チアミン含む): 食欲不振が長期化した猫では欠乏リスクあり
  • L-カルニチン: 250〜500mg/猫/日 PO → 脂肪酸のミトコンドリア輸送を促進(エビデンスは限定的だが安全性は高い)
  • タウリン: 猫は必須アミノ酸。食事内容が不十分なら補充(250mg/猫/日)

💊 臨床Tips

  • 再給餌症候群: 長期絶食後に急激に栄養を投与するとK・P・Mgが急降下 → 不整脈・溶血・筋力低下のリスク。必ず段階的増量
  • 低P(<2.5mg/dL)は溶血性貧血の原因 → リン酸Kの静脈内補充が必要になることも
  • 給餌後に嘔吐する場合: 1回量を減らして分割回数を増やす + メトクロプラミド or マロピタント
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嘔吐のコントロール

  • マロピタント(セレニア®)1mg/kg SC/IV SID → 中枢性嘔吐に有効。第一選択
  • メトクロプラミド 0.2〜0.5mg/kg SC q8h or CRI → プロキネティック効果もあり
  • オンダンセトロン 0.1〜0.5mg/kg IV q8〜12h → 難治性嘔吐に
  • 嘔吐が持続する場合は合併膵炎の可能性を再評価

電解質管理

  • 低K血症: 維持輸液にKCl 20〜40mEq/L添加。経口でもK補充可
  • 低P血症: <2.5mg/dLでは溶血リスク → K2HPO4 0.01〜0.06mmol/kg/h IV
  • 低Mg血症: MgSO4 0.75〜1mEq/kg/day CRI

肝性脳症

  • 重度HLではまれに肝性脳症の症状(流涎、意識レベル低下、異常行動)
  • ラクツロース 0.5mL/kg PO q8〜12h(腸内アンモニア吸収を減少)
  • 肝性脳症が顕著なら蛋白質を一時的に制限(ただしHL回復に蛋白質は必要なため、最小限に)

💊 臨床Tips

  • HLの死亡例の多くは再給餌症候群(低P・低K)or コントロール不能な嘔吐による
  • 退院判断の目安: ①嘔吐なく経管栄養をRER量で摂取できている ②電解質が安定 ③飼い主がチューブ管理を理解
  • 自力摂食の回復には4〜8週間かかることを飼い主に最初から伝えておくことが非常に重要
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脂肪肝ってどんな病気ですか?

猫ちゃんが何日も食べないでいると、体は脂肪をエネルギー源として肝臓に送り込みます。ところが猫は脂肪の処理がもともと苦手で、送り込まれた脂肪が肝臓に溜まってしまい、肝臓が正常に働けなくなります。これが脂肪肝です。放置すると命に関わりますが、しっかり栄養を補給すれば回復する可能性が高いです。

チューブで栄養を入れるのは可哀想ではないですか?

チューブというと大げさに聞こえますが、猫ちゃんの首に小さな管を通すだけで、痛みはほとんどありません。チューブから栄養を入れるのは、シリンジで口から無理やり食べさせるよりも猫ちゃんのストレスが少ないです。お家でもできる方法をお教えしますので、一緒に頑張りましょう。回復には1〜2ヶ月ほどかかりますが、栄養をしっかり入れればほとんどの猫ちゃんが元気になります。

なぜ食べなくなったのですか?

猫ちゃんが食べなくなった原因(きっかけ)を見つけることがとても大切です。ストレス(引っ越し・新しいペット)が原因のこともありますが、膵炎やお腹の炎症などの病気が隠れている場合もあります。栄養の補給と並行して、原因となる病気の検査・治療も進めていきます。
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  1. Center SA. Feline hepatic lipidosis. Vet Clin North Am Small Anim Pract 2005;35(1):225-269.
  2. Valtolina C, Favier RP. Feline hepatic lipidosis. Vet Clin North Am Small Anim Pract 2017;47(3):683-702.
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