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🎯 結論

  • 前庭疾患の初診時に最も重要なのは、末梢性か中枢性かの鑑別である。垂直性眼振、意識レベルの低下、姿勢反応の異常が一つでもあれば中枢性を疑い、MRI等の追加検査を検討する。
  • 犬の前庭疾患で最も多いのは特発性老齢性前庭疾患であり、通常72時間以内に改善が始まり、1〜2週間で症状の大部分が消失する。
  • 猫の末梢性前庭疾患では中耳炎・内耳炎が重要な原因であり、耳鏡検査と画像検査で評価する。
  • 制吐薬(マロピタント 1.0 mg/kg SC SID)による対症療法と支持療法が急性期管理の中心となる。

📖 詳細解説

前庭系は体のバランスと空間認識を司る感覚系であり、末梢前庭器(内耳の前庭・三半規管、前庭神経[第VIII脳神経])中枢前庭核(延髄・小脳)から構成される。

前庭系の障害は以下の特徴的な症候群を引き起こす。

  • 斜頸(Head tilt): 病変側に頭部が傾く
  • 眼振(Nystagmus): 不随意な眼球の律動的往復運動
  • 旋回運動(Circling): 病変側に向かって旋回する
  • 運動失調(Ataxia): 酔ったようなふらつき歩行
  • 嘔吐・流涎: 前庭性の悪心によるもの
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所見 末梢性 中枢性
眼振の方向 水平性・回旋性(方向は一定) 垂直性、または頭部の位置で方向が変化(positional nystagmus)
意識レベル 正常 低下(混迷・昏睡)の可能性あり
姿勢反応 正常 同側の不全麻痺、姿勢反応の低下
ホルネル症候群 病変側に併発することがある まれ
顔面神経麻痺 病変側に併発することがある まれ
斜頸 病変側に傾く 病変側に傾く(鑑別には不十分)

⚠️ レッドフラグ(中枢性を示唆する所見): 上記の鑑別表において、垂直性眼振、意識レベルの低下、姿勢反応の異常の一つでも認められた場合は中枢性前庭疾患の可能性が高く、MRI検査が強く推奨される。

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1. 特発性老齢性前庭疾患(犬)

犬の末梢性前庭疾患で最も一般的な原因。中高齢犬に突然発症する。

  • 経過: 通常72時間以内に改善が始まり、1〜2週間で斜頸以外の症状は概ね消失する
  • 軽度の斜頸が残存することがある(機能的には問題ない場合が多い)
  • 再発: 同側または対側に再発することがある
  • 注意: 脳卒中(脳血管障害)との鑑別が問題となるが、犬での真の脳梗塞・脳出血は稀である

2. 中耳炎・内耳炎

  • 外耳炎の慢性化・鼓膜の穿孔を経て中耳腔に感染が波及するケースが多い
  • 猫では外耳炎の徴候が乏しくても中耳炎が存在することがある(特に猫の鼻咽頭ポリープに注意)
  • 診断: 耳鏡検査(鼓膜の評価)、CT/MRI(鼓室胞の評価)
  • 治療: 全身性抗菌薬(培養・感受性試験に基づく)4〜6週間の長期投与、重篤な場合は鼓室胞骨切り術(外側鼓室胞切開術 / VBO)を検討

3. 甲状腺機能低下症関連(犬)

  • 顔面神経麻痺、前庭徴候を呈する甲状腺機能低下症の報告がある
  • 甲状腺ホルモン補充療法で改善する可能性があり、中高齢の犬では鑑別リストに含めるべきである
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  • 脳腫瘍(髄膜腫、グリオーマなど): 高齢犬猫に多い
  • 脳炎(GME:肉芽腫性髄膜脳炎、NME:壊死性髄膜脳炎など): 若齢〜中齢の小型犬で好発
  • 脳血管障害(脳梗塞): クッシング症候群、高血圧、腎臓病などの基礎疾患に関連
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前庭徴候による激しい悪心・嘔吐と食欲廃絶が問題となるため、対症療法が中心。

制吐薬

  • マロピタント: 1.0 mg/kg SC SID(NK1受容体拮抗薬)。前庭性嘔吐に有効
  • メクリジン(抗ヒスタミン薬): 12.5〜25 mg/dog SID PO。前庭症状に伴う悪心・めまいの軽減

輸液・栄養

  • 嘔吐が持続する場合は脱水補正のためのIV輸液
  • 嘔吐が制御されたら早期に経口摂食を促す

環境管理

  • 安全な環境(壁に衝突しないようクッション・マットの使用)
  • 階段や段差からの転落防止
  • 暗く静かな環境で安静を保つ(視覚・前庭刺激の最小化)
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  • 特発性老齢性前庭疾患: 予後良好。ほとんどの症例で機能的に回復する
  • 中耳炎・内耳炎: 適切な抗菌薬治療で多くは改善。慢性例や再発例では外科介入が必要
  • 中枢性: 原因による。脳腫瘍や進行性脳炎の場合は予後不良のことがある
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Q. 「急に首が傾いて目が揺れています。脳卒中ですか?」

ご心配だと思いますが、犬で最も多い原因は「特発性老齢性前庭疾患」というもので、内耳のバランスを感じる器官に突然異常が起きる状態です。人間でいう「めまい」のようなもので、脳卒中(脳梗塞)とは異なります。多くの場合、3日ほどで少しずつ改善が始まり、1〜2週間でかなり回復します。まずは検査で脳の問題がないかを確認させてください。

Q. 「ご飯を食べないし、吐いてしまいます」

三半規管の異常で強い「乗り物酔い」のような状態になっているので、気持ち悪くて食べられないのは自然な反応です。吐き気止めのお薬と点滴で対応しますので心配しないでください。吐き気が治まれば食欲も戻ることがほとんどです。

Q. 「首の傾きは治りますか?」

多くの場合、首の傾きはかなり改善しますが、軽度の傾きが残ることもあります。ただ、少し首が傾いたままでも、日常生活には支障なく過ごせる子がほとんどです。ふらつきが落ち着いてくれば、いつも通りお散歩も楽しめるようになります。
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