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🎯 結論

  • 角膜潰瘍の治療戦略は深さによって決定される。ストロマの50%以上が欠損している場合、またはデスメ膜瘤(Descemetocele)が認められる場合は内科療法では不十分であり、外科的介入が第一選択となる。
  • 角膜潰瘍に対するステロイド点眼およびNSAIDs点眼は絶対禁忌。角膜の治癒を遅延させ、穿孔リスクを著しく上昇させる。
  • 融解性角膜潰瘍(Melting ulcer)に対しては、抗コラゲナーゼ療法として自己血清点眼が有効である。
  • 全ての角膜潰瘍には広域抗菌点眼薬の投与が必要であり、重篤な場合は1〜2時間おきの頻回投与を行う。

📖 詳細解説

角膜は外側から以下の4層で構成される。

1. 角膜上皮(Epithelium): 最外層。5〜7層の細胞
2. 角膜実質(ストロマ)(Stroma): 角膜厚の約90%を占める透明な層
3. デスメ膜(Descemet's membrane): 薄い基底膜
4. 角膜内皮(Endothelium): 最内層

潰瘍の深さが治療方針を決定するため、スリットランプ生体顕微鏡によるストロマ欠損の割合の評価が不可欠である。

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深さ 分類名 治療の方向性
上皮のみ欠損 表層性角膜びらん 抗菌点眼のみで治癒可能。通常3〜7日
ストロマの50%未満 浅い実質性潰瘍 抗菌点眼+散瞳薬で内科管理。治癒に1〜3週間
ストロマの50%以上 深い実質性潰瘍 外科的介入を強く推奨(結膜フラップ等)
デスメ膜露出 デスメ膜瘤 緊急の外科適応。穿孔のリスクが極めて高い
全層穿孔 角膜穿孔 即座の外科修復が必要
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広域抗菌点眼薬

二次感染の予防・治療が全ての角膜潰瘍管理の基本である。

  • オフロキサシン点眼液 または トブラマイシン点眼液: q4-6h(1日4〜6回)
  • 重篤な感染性角膜炎(融解性潰瘍含む): q1-2h(1〜2時間おきの頻回投与)
  • 培養・感受性試験の結果に基づく薬剤変更を検討する

散瞳・毛様体筋鎮痙薬

角膜潰瘍は反射性の前ぶどう膜炎を引き起こし、毛様体筋の痙攣による強い疼痛を伴う。

  • 1%アトロピン点眼: BID〜TID
  • 猫ではアトロピンの苦味による流涎に注意(目薬が鼻涙管を通じて口腔内に流入するため)
  • 緑内障が併存する場合はアトロピン点眼は禁忌(眼圧上昇を助長)

抗コラゲナーゼ療法(融解性潰瘍の場合)

融解性角膜潰瘍(Melting ulcer)は、細菌や白血球由来のコラゲナーゼ(MMP)がストロマのコラーゲンを急速に分解し、角膜がゼリー状に融解する緊急病態である。

  • 自己血清点眼: 患者またはドナー動物(犬)の血清を採取し、q2-4hで点眼。血清中のα2-マクログロブリンがコラゲナーゼを中和する
  • アセチルシステイン: コラゲナーゼ活性の抑制に有効とされる

エリザベスカラー

角膜潰瘍の管理においてエリザベスカラーの装着は絶対必須。自己損傷(前肢での掻き)による潰瘍の深化・穿孔を防止する。

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結膜フラップ(Conjunctival Graft/Flap)

最もよく用いられる外科手法。結膜組織で潰瘍部位を被覆し、血管からの栄養供給と構造的支持を提供する。

  • 360度フラップペディクルフラップ(有茎フラップ)フードフラップなど
  • 術後は角膜の透明性がやや低下するが、眼球を保存できる

角膜移植・生体材料パッチ

  • 豚小腸粘膜下組織(SIS)パッチ、羊膜移植などの生体材料が利用される
  • 自家角膜移植は技術的に高度であり専門施設で実施される
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禁忌薬 理由
ステロイド点眼薬 角膜上皮の再生を阻害し、コラゲナーゼ活性を増強。潰瘍の悪化と穿孔を招く
NSAIDs点眼薬 角膜の治癒遅延。融解性潰瘍のリスクを高める

角膜潰瘍が疑われる「赤い目」に対し、原因不明のままステロイド点眼を処方することは臨床上の重大なエラーである。フルオレセイン染色による角膜潰瘍の有無の確認を、ステロイド点眼処方前に必ず行うべきである。

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Q. 「目を掻いているのですが、大丈夫ですか?」

目を掻く行動は角膜に傷がある可能性を示しています。掻き続けると傷が深くなり、最悪の場合は目に穴が開いてしまうこともあります。すぐにエリザベスカラー(首に付ける保護具)を装着して、早めに受診してください。エリザベスカラーはかわいそうに見えるかもしれませんが、目を守るために絶対に必要です。

Q. 「家にある目薬をさしてもいいですか?」

絶対にやめてください。人間用の目薬にはステロイドや消炎成分が含まれていることがあり、角膜に傷がある状態で使うと傷を悪化させ、最悪の場合は失明の原因になります。必ず獣医師が処方した専用の目薬だけを使ってください。

Q. 「目薬を1日に何回もさすのが大変です」

お気持ちはよくわかります。ただ、角膜潰瘍は感染が広がると急速に悪化する病気で、頻回の点眼が治療の鍵になります。特に最初の数日間が勝負です。もしどうしても難しい場合は、入院治療に切り替えることも可能ですのでご相談ください。
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  1. Maggs DJ, Miller PE, Ofri R. Slatter's Fundamentals of Veterinary Ophthalmology, 6th ed. Elsevier, 2018. Chapter: Cornea and Sclera.
  2. Bentley E. Spontaneous chronic corneal epithelial defects in dogs: a review. JAAHA, 2005;41(3):158-165.
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