FLUTD(Feline Lower Urinary Tract Disease: 猫下部尿路疾患)は、頻尿、血尿、排尿困難、不適切な場所での排尿など、膀胱〜尿道に関連する臨床症候群の総称である。中年、肥満、運動不足、室内飼育の猫に好発する。ストレス、食事内容、多頭飼育環境もリスク因子となる。
重要なのは、FLUTDは「閉塞性」と「非閉塞性」で管理が根本的に異なることである。
非閉塞性FLUTDの約2/3は原因を特定できず、猫特発性膀胱炎(FIC: Feline Idiopathic Cystitis)と診断される。ストレスが主要な誘因と推定されている。
FICは疼痛を伴う疾患であり、急性エピソード時にはブプレノルフィンやガバペンチン等による疼痛緩和が推奨される。NSAIDsのFICに対する有効性は示されていない。
尿を希釈し排尿頻度を増やすことが症状緩和に有効である。具体的には完全ウェットフードへの切り替え、複数箇所への新鮮な水の設置、流水式給水器の使用、水への低ナトリウムブロスの添加などが推奨される。
MEMO(Multimodal Environmental Modification)はFICの再発予防において最も重要な要素とされる。
FICの尿は通常無菌であり、尿培養で細菌感染が確認されない限り抗菌薬は投与しない。
尿道閉塞(obstructive FLUTD)は主に雄猫で発生する。雄の尿道は狭いため、尿路結石、尿道栓子(クリスタルとマトリックスの混合物)、または尿道痙攣により閉塞しやすい。未治療では2〜3日以内に腎不全を来し致死的となる。
##### 閉塞解除
鎮静または麻酔下で尿道カテーテルを通過させ、閉塞物を膀胱内へフラッシュバックする。カテーテル留置が直ちに困難な場合、または膀胱が極度に緊満している場合は減圧性膀胱穿刺(decompressive cystocentesis)を考慮する。ただし炎症により膀胱壁が脆弱化している可能性があり慎重に行う。
##### 代謝異常の補正
高カリウム血症、代謝性アシドーシス、高窒素血症(BUN/Cre上昇)に対する積極的な静脈内輸液が不可欠。高カリウム血症は致死的不整脈を引き起こしうるため、優先的に対処する。
##### 尿道カテーテル留置
1〜3日間の留置により持続的な尿路開通を確保し、膀胱の回復を促す。
##### 薬物療法
##### モニタリング
水和状態、尿量、血液検査(電解質、腎パネル)を注意深くモニタリングする。閉塞後利尿(post-obstructive diuresis)に注意。
##### 原因の特定
尿検査、画像検査(X線・エコー)、結石分析を通じて根本原因を特定する。
##### 食事管理
結石の種類に応じた処方食を選択(ストルバイト溶解食、シュウ酸カルシウム予防食など)。FIC関連ではウェットフードが推奨される。
##### 環境エンリッチメント
非閉塞性FLUTDと同様にMEMOが重要。
##### 会陰尿道造瘻術(PU手術)
繰り返す閉塞に対する最終手段。尿道開口部を拡大するが、狭窄やUTIリスク増加の合併症がある。
| 項目 | 非閉塞性(FIC) | 閉塞性(Emergency) |
|---|---|---|
| 緊急度 | 中程度 | 最高(致死的) |
| 好発 | 雌雄いずれも | 主に雄 |
| 主な治療 | 疼痛管理 + MEMO | 尿道カテーテル + 輸液 |
| 抗菌薬 | 原則不要 | 培養結果で判断 |
| 予後 | 再発あるが管理可能 | 迅速治療で良好 |