猫の呼吸困難の鑑別で最も多い原因の一つ。「まず抜く、同時に調べる」が鉄則。
猫の呼吸促迫(開口呼吸・腹式呼吸)を見た場合、真っ先に疑うべきは「胸水貯留」と「肺水腫」です。 エコー(T-FAST)を用いれば、ストレスを最小限に数秒で胸水の有無を確認できます。胸水抜去(胸腔穿刺)は救命的な処置ですが、一気に抜きすぎると「再膨張性肺水腫」という致死的な合併症を引き起こすリスクがあるため、低圧でゆっくり抜くことが鉄則です。
| ❌ 旧来の常識 | ✅ 最新のエビデンス |
|---|---|
| 呼吸が荒い猫が来たら、まずレントゲンを撮って確認する | レントゲンの保定ストレスで猫が急死する危険がある。最初は超音波(T-FAST)を使い、伏せた自然な姿勢のまま胸水の有無を即座に確認する。 |
| 胸水が溜まっていたら、シリンジで一気に吸い切る | 虚脱していた肺が急激に広がると「再膨張性肺水腫」を起こす。ゆっくり、低圧で抜水する。 |
| 若い猫の胸水=FIPと決めつける | 雑種の若い猫でも肥大型心筋症(HCM)による胸水が非常に多い。心エコーによる評価が必須。 |
| 性状 | 総蛋白(TP) | 有核細胞数(TNCC) | 代表的な原因疾患 |
|---|---|---|---|
| 漏出液 | < 2.5 g/dL | < 1,000 /μL | 低アルブミン血症、肝硬変 |
| 変性漏出液 | 2.5〜3.0 g/dL | 1,000〜5,000 /μL | うっ血性心不全(HCM等)、腫瘍 |
| 滲出液 | > 3.0 g/dL | > 5,000 /μL | FIP、膿胸、乳び胸 |
| 胸水タイプ | 鑑別のポイント |
|---|---|
| 乳び胸 | 胸水TG > 血清TG(通常 胸水TG > 100 mg/dL)。白色不透明。 |
| 膿胸 | ブドウ糖濃度(胸水 < 血清)、乳酸濃度(胸水 > 血清)。白〜黄色、悪臭、好中球と細菌。 |
| 原因疾患 | 胸水の性状・特徴 | 鑑別のポイント・次の検査 |
|---|---|---|
| 1. 心疾患(心不全) | 漏出液〜変性漏出液。乳び胸になることもある。 | 心エコーで左心房拡大、心筋肥厚を確認。NT-proBNP > 250 pmol/L。 |
| 2. FIP | 滲出液(黄色〜黄金色、粘稠性)。高タンパク。 | リバルタ反応陽性。A/G比 < 0.4。PCR検査。 |
| 3. 腫瘍(縦隔リンパ腫など) | 変性漏出液〜滲出液、血様の場合もある。 | 細胞診で腫瘍細胞を探索。胸水抜去後にエコーで縦隔病変を確認。 |
⚠️ 初期対応の原則: 呼吸促迫(> 40回/分、開口呼吸)のある患者に対し、まずは酸素化と超音波ガイド下での胸腔穿刺を推奨。
| ステップ | アクションと注意点 |
|---|---|
| 穿刺前の準備 | 伏臥位またはパグ座り。酸素をかがせながらエコーで「スイートスポット」を探しマーキング。 |
| 穿刺部位 | 第7〜9肋間の肋軟骨接合部付近。肋骨の前縁に沿って穿刺。 |
| 穿刺と吸引のコツ | 延長チューブと三方活栓。シリンジを強く引きすぎない。 |
| 合併症への配慮 | 再膨張性肺水腫のリスク軽減のため、呼吸が楽になった時点で一旦ストップ。 |
| 採取検体の処理 | EDTA管(細胞診)、プレーン管(TP、比重)、培養(膿胸疑い)。最低1mL保存。 |