肥満はBCS(Body Condition Score)8〜9/9、または理想体重の20%以上超過で定義され、糖尿病、変形性関節症、皮膚疾患、尿路疾患、麻酔リスク増大など多数の合併症と関連する。減量の基本計算はRER(安静時エネルギー要求量)= 70 ×(理想体重kg)^0.75であり、減量時給与量は犬: RER × 1.0、猫: RER × 0.8を目安とする。目標減量ペースは犬で週に体重の1〜2%、猫で0.5〜1%。猫の過度な絶食・急激な減量は肝リピドーシス(脂肪肝)の誘因となるため絶対に避ける。2〜4週ごとに体重を再評価し、減量ペースが目標を下回る場合はさらに10%給与量を削減する。
| ❌ 旧来 | ✅ 最新 |
|---|---|
| 「ぽっちゃりは健康の証」 | 肥満は慢性炎症性疾患。脂肪組織はアディポカインを産生し、全身性の炎症を惹起する |
| フードの量を減らせば痩せる | 単純なカロリー制限は代謝適応(基礎代謝の低下)を招く。高タンパク・高繊維の減量サポート食を使用し、筋肉量を維持しながら脂肪を落とすことが推奨される |
| 猫は少し太っていても大丈夫 | 猫のBCS 8/9以上は糖尿病のリスクが4倍に上昇するというデータがある |
| BCS (9段階) | 状態 | 体脂肪率の目安 |
|---|---|---|
| 1-3 | 痩せすぎ | < 10% |
| 4-5 | 理想体重 | 15〜25% |
| 6-7 | 過体重 | 25〜35% |
| 8-9 | 肥満 | > 35% |
過去のカルテから「最も健康だった時期の体重」を参照するのが最も正確だが、記録がない場合はBCSから逆算する。
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理想体重の推定 = 現在の体重 ÷ (100% + (BCS - 5) × 10%)
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例: 現在BCS 8/9で7 kgの猫(理想より約30%過体重) → 理想体重 ≒ 7 ÷ 1.3 ≒ 5.4 kg
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RER (kcal/day) = 70 × (理想体重 kg)^0.75
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| 理想体重 | RER |
|---|---|
| 3 kg | 160 kcal |
| 4 kg | 198 kcal |
| 5 kg | 234 kcal |
| 10 kg | 394 kcal |
| 20 kg | 662 kcal |
| 30 kg | 897 kcal |
| 動物種 | 減量時給与量 |
|---|---|
| 犬 | RER × 1.0 (理想体重で計算) |
| 猫 | RER × 0.8 (理想体重で計算) |
⚠️ 猫のRER × 0.8は最低ライン。これ以下のカロリー制限は肝リピドーシスのリスクを高めるため行わない。
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1日の給餌量 (g) = 減量時カロリー ÷ フードのカロリー密度 (kcal/g)
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例: 減量サポート食が3.2 kcal/g、猫の理想体重4 kgの場合 → 198 × 0.8 ÷ 3.2 ≒ 50 g/day
| 項目 | 犬 | 猫 |
|---|---|---|
| 目標減量ペース | 週に体重の1〜2% | 週に体重の0.5〜1% |
| 再評価のタイミング | 2〜4週ごと | 2〜4週ごと |
| ペースが目標以下の場合 | 給与量をさらに10%削減 | 同左 |
| ペースが目標以上の場合 | 給与量を5〜10%増加 | 急激な減量は肝リピドーシスリスク。必ず増量して調整 |
例: 7 kgの猫 → 週に0.035〜0.07 kgの減量が適切
猫の肥満管理で最も注意すべき合併症が肝リピドーシス(脂肪肝)である。
💡 臨床Tips
- 多頭飼育では「他の猫がフードを横取りする」ことが減量失敗の主因になりやすい。マイクロチップ連動型の給餌器の導入を検討する。
- おやつは1日の総カロリーの10%以内に制限する。可能であればおやつ分のカロリーを食事量から差し引く。
- 減量サポート食は高タンパク・高繊維の処方食が推奨される。高タンパクは筋肉量の維持に、高繊維は満腹感の持続に寄与する。
食事管理だけでなく、運動量の増加も減量成功の重要な柱である。
| 動物種 | 運動の推奨 |
|---|---|
| 犬 | 散歩時間を段階的に延長(初期は1日20分 × 2回から、4〜6週かけて30〜40分 × 2回へ)。水泳は関節への負担が少なく肥満犬に特に有効 |
| 猫 | インタラクティブなおもちゃ(猫じゃらし、レーザーポインター)で1日15〜20分の遊び時間を確保。食事をパズルフィーダーに入れることで活動量と精神的刺激を同時に増やす |
減量プログラムで最大の障壁は飼い主の継続的な協力である。
| 戦略 | 具体的な方法 |
|---|---|
| 定量的な給餌 | 計量カップではなくデジタルスケールで毎食計量してもらう(計量カップは誤差が大きい) |
| 家族全員への説明 | 家族の一人が「かわいそう」と追加で食べ物を与えると計画が破綻する。全員が同じルールを守ることが必須 |
| 短期目標の設定 | 「半年で理想体重へ」ではなく「2週間で100 g減を目標に」。小さな成功体験を積み重ねる |
| 定期的な通院 | 体重測定だけでなく「褒められる機会」としての通院。飼い主のモチベーション維持 |