📋 👑 すべて表示

🎯 結論

  • 高カリウム血症の第一手は「心筋保護」である。10%グルコン酸カルシウム 0.5〜1.5 mL/kg IVをECGモニター下で2〜5分かけて静注し、血清K値ではなく心筋の閾値電位を回復させる
  • 低カルシウム血症(テタニー・発作時)にも同じ10%グルコン酸カルシウムを用いるが、急速静注は徐脈・心停止を招くため必ず10〜15分かけて投与する
  • KCl静脈内投与速度は絶対に0.5 mEq/kg/hrを超えてはならない。致死性不整脈の原因となる

📖 詳細解説

高カリウム血症(>5.5 mEq/L)─ 心停止に至る前に

##### 主な原因

  • : FLUTD(下部尿路疾患)に伴う尿道閉塞 ─ 閉塞猫の約12〜40%に中等度〜重度の高K血症が発現
  • : 副腎皮質機能低下症(アジソン病)クリーゼ ─ アジソン病犬の約80〜90%が低Na/高K血症を呈する。その他、乏尿/無尿性AKI、尿路破裂

##### 心電図変化 ─ 血清値より危機を反映する

ECG所見はK値の上昇に伴い段階的に進行し、血清値以上に生命の危機を正確に反映する

K値 ECG所見
>6.0 mEq/L T波のテント状増高
>7.0 mEq/L QRS波延長・P波消失
>8.5 mEq/L サインカーブ化 → 心室細動/心停止

##### 緊急治療アルゴリズム

1. 心筋保護(最優先): 10%グルコン酸カルシウム 0.5〜1.5 mL/kg IV、ECGモニター下で2〜5分かけて静注(※10〜15分かけるのは低Ca血症のプロトコルであり、高K血症では心停止回避の即効性が求められるため遅すぎる)。血清K値は下げないが、心筋の閾値電位を正常化させ致死的不整脈を防ぐ(効果: 15〜30分程度)
2. Kの細胞内シフト: レギュラーインスリン 0.25〜0.5 U/kg IV(犬)、0.1〜0.2 U/kg IV(猫)+ ブドウ糖(インスリン1Uにつき2g)IV。(※猫はインスリン感受性が高いため犬より用量を減らす)。代替: テルブタリン(β2作動薬)0.01 mg/kg IM/SC もKシフトに有効
3. Kの体外排泄: 輸液(0.9% NaClまたは乳酸リンゲル)による利尿。尿路閉塞がある場合は閉塞解除が最優先

低カリウム血症(<3.5 mEq/L)─ 猫の頸部腹屈に注意

##### 主な原因

  • CKD猫で有病率20〜30%
  • DKA治療初期のインスリンによる細胞内シフト(医原性: 30〜50%で発生)

##### 臨床徴候

  • 筋静止膜電位の過分極 → 全般性の筋脱力
  • 猫では特徴的な頸部腹屈(Cervical ventroflexion)
  • 重度(<2.5 mEq/L)では呼吸筋麻痺

##### 治療

  • 塩化カリウム(KCl)を輸液に添加しCRIで投与
  • 【致命的注意】投与速度の絶対上限: 0.5 mEq/kg/hr(通常は0.2〜0.3 mEq/kg/hrで管理)
🔒この先の詳細解説は PawMedicalのNote で発信しています

診断の大原則: 総カルシウム(tCa)ではなく、生理学的に活性を持つイオン化カルシウム(iCa)の測定が必須である。

高カルシウム血症(iCa >1.4 mmol/L)

##### 主な原因

  • : 約50〜70%が悪性腫瘍(リンパ腫、AGASACA)に伴う液性高Ca血症
  • : 特発性高Ca血症(IHC)が最多(約40%)、次いで悪性腫瘍(約30%)

##### 臨床徴候

  • 多飲多尿、食欲不振、嘔吐、嗜眠
  • 重度(iCa >1.6 mmol/L)ではAKI(腎虚血+尿細管Ca沈着)や神経症状(昏迷)

##### 緊急治療アルゴリズム

1. 体液量回復+Ca排泄促進: 0.9% NaCl IV。NaとCaは尿細管で競合的に再吸収されるため、Na負荷によりCa排泄が促進される
2. 利尿薬: 水和完了後に フロセミド 1〜2 mg/kg IV。※脱水時投与は禁忌
3. 破骨細胞活性の抑制: ゾレドロン酸 0.1〜0.2 mg/kg IV(15分以上かけて)または パミドロン酸 1〜2 mg/kg IV(2時間かけて)。効果発現まで24〜48時間
4. ステロイド: リンパ腫が確定している場合のみ プレドニゾロン 1〜2 mg/kg。未診断時の投与はリンパ腫の確定診断を困難にするため禁忌

低カルシウム血症(iCa <1.1 mmol/L)

##### 主な原因

  • 犬の産褥テタニー(小型犬の授乳期に好発)
  • 医原性副甲状腺機能低下症(甲状腺切除後)
  • 急性膵炎、エチレングリコール中毒、重度敗血症
  • ICU症例の約15〜20%に重症疾患に伴うイオン化低Ca血症が認められる

##### 臨床徴候(iCa <0.9 mmol/Lで発現しやすい)

  • 顔面掻痒行動(顔をこする)、筋線維束性攣縮、テタニー、全身性発作
  • ECGではQT延長

##### 緊急治療

  • 急性テタニー・発作時: 10%グルコン酸カルシウム 0.5〜1.5 mL/kg IV、ECGモニター下で10〜15分かけて緩徐投与(急速投与は徐脈・心停止のリスク
  • 維持療法: グルコン酸カルシウムCRI(5〜15 mg/kg/hr [elemental Caとして])、並行して 経口カルシトリオール(活性型ビタミンD3)と 炭酸カルシウム の投与を開始
🔒この先の詳細解説は PawMedicalのNote で発信しています
電解質異常 予後
高K血症(猫の尿道閉塞) 適切な心筋保護+閉塞解除で退院時生存率 90〜95%
高K血症(アジソン病) 生涯のホルモン補充で健常犬と同等の寿命
高Ca血症(悪性腫瘍随伴) T細胞性リンパ腫が多く予後不良。MST 2〜6ヶ月
低Ca血症(副甲状腺機能低下症) カルシトリオール+Ca補充で予後良好。管理不十分による再発率 10〜20%
🔒この先の詳細解説は PawMedicalのNote で発信しています

Q. 「カリウムが高いと言われましたが、どういうことですか?」

カリウムは体の中で心臓のリズムを調節する大切なミネラルです。これが高くなりすぎると、心臓の動きが乱れて命に関わることがあります。今は点滴で心臓を守りながら、カリウムを下げる治療をしています。原因の治療(おしっこの詰まりの解除など)ができれば、多くの場合は改善しますのでご安心ください。

Q. 「カルシウムが高いのは骨が丈夫ということではないですか?」

残念ながら、血液中のカルシウムが高いのは骨が丈夫なこととは関係ありません。むしろ、腫瘍やホルモンの異常が原因で体のバランスが崩れて高くなっていることが多いです。放っておくと腎臓にダメージが出ることがありますので、まずは原因を調べて適切な治療を行うことが大切です。

Q. 「退院した後に気をつけることはありますか?」

電解質の異常は原因によって再発することがあります。お薬の飲み忘れがないようにすることと、食欲が落ちたり元気がなくなったりした場合は早めにご来院ください。定期的な血液検査で値が安定しているか確認することが大切です。
🔒この先の詳細解説は PawMedicalのNote で発信しています
  1. Tag TL, Day TK. Electrocardiographic assessment of severity of hyperkalemia in dogs and cats. J Vet Emerg Crit Care. 2008;18(1):21-27.
  2. Messinger JS, Windham WR, Ward CR. Ionized hypercalcemia in dogs: a retrospective study of 109 cases (1998-2003). J Vet Intern Med. 2009;23(3):514-519.
  3. Holowaychuk MK. Hypocalcemia of critical illness in dogs and cats. Vet Clin North Am Small Anim Pract. 2013;43(6):1299-1317.
  4. Segev G, Kass PH, Rubinsky-Elefant G, et al. Evaluation of the retrospective use of terbutaline for the treatment of hyperkalemia in dogs and cats. J Vet Emerg Crit Care. 2011;21(4):353-359.
  5. Silverstein DC, Hopper K. Small Animal Critical Care Medicine, 3rd ed. Elsevier; 2022. (Chapter 63-65)