Creが昨日まで正常だった犬が突然無尿に ── AKIは早期発見と積極的な輸液管理で予後が劇的に変わる。原因の特定と除去が生死を分ける。
急性腎障害(AKI)は腎機能が数時間〜数日で急激に低下する病態であり、CKDと異なり可逆的な可能性があるのが最大のポイント。AKIの原因は①腎前性(脱水・ショック → 腎灌流↓)②腎性(腎毒性物質・感染・虚血)③腎後性(尿路閉塞)に分類され、原因によって治療が根本的に異なる。初期対応の核は①原因の特定と除去(腎毒性物質の中止、尿路閉塞の解除)②積極的な輸液療法で腎灌流を回復 ③尿量モニタリング(目標: 1-2mL/kg/h)④高カリウム血症の緊急管理。IRIS AKIグレーディング(I-V)による重症度評価を行い、Grade III以上・乏尿/無尿・高カリウム(> 6.5mEq/L)が持続する場合は透析(血液透析 or 腹膜透析)のある施設への紹介を検討。
| グレード | クレアチニン | 臨床所見 | 対応 |
|---|---|---|---|
| I |
< 1.6mg/dL(犬) < 1.6mg/dL(猫) |
AKIの既知のリスク因子(腎毒性薬・虚血イベント等)があり、Creはまだ正常範囲だが上昇傾向 | リスク因子の除去、輸液開始 |
| II | 犬猫共通: Cre 1.7-2.5mg/dL | 軽度〜中等度の高窒素血症 | 積極的輸液、原因精査 |
| III | 犬猫共通: Cre 2.6-5.0mg/dL | 中等度高窒素血症、嘔吐・食欲不振 | 入院管理、尿量モニタ |
| IV | 5.1-10.0mg/dL | 重度高窒素血症、乏尿リスク | ICU管理、透析の検討 |
| V | > 10.0mg/dL | 生命を脅かす高窒素血症、無尿 | 透析が理想。一般病院では最大限の輸液+支持療法 |
※サブグレード: 尿産生能(O = 乏尿/無尿、NO = 非乏尿)で追加分類。例: Grade III-O = Grade III + 乏尿
| 分類 | 原因 | 治療の核 |
|---|---|---|
| 腎前性 | 脱水、ショック、心不全、麻酔中低血圧 | 輸液蘇生。腎灌流が回復すればCre改善(可逆性高い) |
| 腎性 | 腎毒性物質(エチレングリコール・ユリ・NSAIDs・アミノグリコシド)、レプトスピラ、虚血後 | 毒性物質の中止・解毒、抗菌薬(レプトスピラ)、輸液で腎灌流維持 |
| 腎後性 | 尿道閉塞(猫の尿道閉塞)、尿管結石、膀胱破裂 | 閉塞の解除が最優先。尿量が回復すれば急速に改善 |
graph TD
A["AKIによる乏尿 (尿量 < 1mL/kg/h)"]
A --> B{"まず脱水が完全に補正されているか確認?"}
B -->|"いいえ"| C["脱水補正を最優先"]
B -->|"はい"| D["フロセミド 2-4mg/kg IV 投与"]
D --> E{"30分後の尿量反応"}
E -->|"増加あり"| F["フロセミドCRI 0.5-1mg/kg/h 検討"]
E -->|"増加なし"| G{"無尿が確定しているか? (尿量 < 0.5mL/kg/h)"}
G -->|"はい"| H["マンニトール禁忌; 体液過剰悪化リスク; 透析施設へ紹介"]
G -->|"いいえ"| I["マンニトール 0.5-1g/kg IV (20分かけて)"]
I --> J{"マンニトール投与後の尿量反応"}
J -->|"増加あり"| K["継続観察, 原因精査"]
J -->|"増加なし"| L["本質的な乏尿/無尿 (intrinsic AKI); 透析施設へ紹介"]