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🎯 結論

  • 「ショック=一律の大量ボーラス」は推奨されない。 個別化された小刻みな輸液(Titration)が基本。
  • 初期蘇生は10〜20 mL/kgの晶質液を15〜20分で投与し、反応を評価して追加を判断。
  • 蘇生の目標は平均血圧≥65 mmHg、乳酸値≤2.5 mmol/L。過剰輸液は害になる。
  • ショックの分類(循環血液量減少性・分布性・心原性・閉塞性)に応じた治療戦略を選択する。

📖 詳細解説

❌ 旧来の常識 ✅ 最新のエビデンス (2024 AAHA)
犬のショック投与量は90mL/kg、これを一気に静注する 犬10〜20mL/kg、猫5〜10mL/kgの小ボーラスを10〜15分かけて投与し、その都度効果を再評価する(Titration)。
脱水もショックも、とりあえず乳酸リンゲル液を全開で落とす ショック(還流障害)脱水(間質水分低下)を明確に区別し、蘇生段階(Resuscitation phase)と補水段階(Replacement phase)を分けて計画する。
血圧が正常ならショックは脱した 代償性ショックでは血圧は維持される(特に犬)。心拍数、粘膜色、CRT、乳酸値で「隠れた組織低灌流」を見逃さない。
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指標 カットオフ値 臨床的意義
収縮期血圧(SBP) < 90 mmHg 低血圧の定義。即座に介入が必要。
平均動脈圧(MAP) < 60 mmHg 臓器灌流が維持できない危険水準。
ショック量(犬) 80〜90 mL/kg 全量ではなく1/4量ずつ使用する基準値。
ショック量(猫) 50〜60 mL/kg 犬より少ない。過剰投与に特に注意。
乳酸クリアランス 2〜6時間で 50%以上低下 達成時に生存率が有意に改善。
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犬と猫ではショックの現れ方が異なります。特に猫の「徐脈」には要注意です。

ステージ 犬の主なサイン 猫の主なサイン 対応の緊急度
代償性 頻脈(>140)、速いCRT(<1秒)、レンガ色の粘膜 ★猫にはこのステージがほぼ見られない すぐに介入すれば予後良好。血圧正常の罠に注意。
初期非代償性 頻脈、遅いCRT(>2秒)、蒼白な粘膜、低血圧 徐脈(< 140 bpm)、低血圧、低体温(< 37.8℃)、蒼白な粘膜 緊急介入必須。猫の「徐脈+低体温」は死のサイン。
後期非代償性 深刻な徐脈への移行、昏睡、チアノーゼ 深刻な徐脈、昏睡、無呼吸 直ちに心肺蘇生(CPR)の準備が必要。
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⚠️ 注意: 心原性ショック(心疾患が原因)の場合、輸液は禁忌(肺水腫悪化)です。必ず事前聴診とPOCUS(TFAST)で左房拡大やBラインの有無を確認してください。

ステップ 具体的なアクション 評価ポイント・目標
Step 1: Fluid Challenge 等張性晶質液の小ボーラスを投与。🐶 犬: 10〜20 mL/kg、🐱 猫: 5〜10 mL/kg を10〜15分かけて静注。 投与直後の心拍数、血圧、CRT、乳酸値、意識レベルを記録する。
Step 2: 効果判定 エンドポイント(MAP > 60 mmHg、SBP > 90 mmHg、CRT < 2秒、乳酸値低下傾向)に達したか? 達した場合はStep 4(維持・補水)へ。達しない場合はStep 3へ。
Step 3: 追加ボーラス Step 1と同じ用量をもう一度投与する(最大3〜4回まで追加考慮)。 晶質液だけで反応が悪い場合、高張食塩水や膠質液、または昇圧剤(ノルアドレナリン 0.1〜2.0 μg/kg/min CRI)の併用を検討。
Step 4: 移行とモニタリング 蘇生完了後は、脱水補正と維持輸液(Replacement & Maintenance)の計算に切り替える。 過剰輸液(Fluid Overload)の兆候(頻呼吸、鼻汁、結膜浮腫、新しい心雑音)を厳重に監視する。
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猫のショックは「徐脈(< 140 bpm)・低体温(< 37.8℃)・低血圧」の3徴候で知られます。

1. 温めることを優先: 猫は低体温のままでは輸液や昇圧剤に対する血管の反応性が極めて悪いです。輸液の加温と併行して、積極的な体表加温を行います。
2. 輸液量に極度な注意: 猫の血液量は犬より少ない(約60 mL/kg)ため、過剰輸液による肺水腫や胸水のリスクが非常に高いです。ボーラスは必ず5〜10 mL/kgの少量から開始します。
3. 体温が復温する前の積極的な大量輸液は肺水腫のリスクを高めるため、加温しながら慎重に輸液を行います。
4. ショック器官: 猫のショック標的器官は「肺」です。輸液蘇生中に呼吸状態が悪化しないか、呼吸数のカウント(頻呼吸)が最重要のモニタリングとなります。
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Q. 「点滴を全開で大量に入れれば早く良くなるのではないですか?」

「昔はそのように考えられていた時代もありました。しかし最新のガイドラインでは、急激に大量の水分を入れると、逆に心臓や肺がパンクして息が苦しくなる『過剰輸液』というリスクが高いことが分かっています。現在は、少しずつ適切な量を入れて、体の反応を細かく確認しながら慎重に治療を進めることが、最も生存率を高める方法です。」

Q. 「うちの猫はぐったりして冷たいのですが、大丈夫ですか?」

「猫ちゃんの体温が下がっている状態(低体温)は、ショックという非常に危険な状態の兆候の一つです。猫のショックでは、犬と違って心拍数が下がり、体温も低くなるという特徴があります。今は温めることと、少しずつ点滴を入れることを同時に進めていますが、状態は非常に注意深く見守る必要があります。」
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  1. 2024 AAHA Fluid Therapy Guidelines for Dogs and Cats. JAAHA, 2024.
  2. Silverstein DC, et al. Small Animal Critical Care Medicine (3rd Ed), 2023.
  3. Boller M, et al. Fluid resuscitation in dogs and cats: current evidence and guidelines. Vet Emerg Crit Care, 2023.