犬猫が頻尿、血尿、排尿困難を示すとき、安易に「膀胱炎だから抗菌薬」と処方するケースが臨床現場では依然として多い。しかし、ISCAIDガイドラインはこの慣習を見直すよう強く推奨している。
尿沈渣の細胞診(染色・非染色)による膿尿の確認が第一歩。重要な注意点として、ディップスティックの白血球エステラーゼと亜硝酸塩テストは犬猫では信頼性が低いため、膿尿の判定に使用すべきではない。
確定診断には膀胱穿刺(cystocentesis)で採取した尿の定量好気性培養が必要。自然排尿サンプルは汚染リスクが高く推奨されない。
特に猫では細菌性膀胱炎の頻度が低い(下部尿路症状の多くはFIC)ため、尿培養なしに抗菌薬を投与することは避けるべきである。
培養で細菌が検出されるが、臨床症状(頻尿・血尿・排尿痛等)がない状態。
ISCAID推奨: 膿尿があっても、多剤耐性菌が検出されても、臨床症状がなければ原則として抗菌薬治療は推奨しない。治療はごく限られたハイリスク症例(免疫抑制状態で重篤な全身感染リスクがある場合など)にのみ考慮する。
12か月に1回以下の頻度で発生する、合併症のない細菌性膀胱炎。
経験的治療の第一選択:
| 薬剤 | 理由 |
|---|---|
| アモキシシリン | 尿中高濃度、安全性、コスト效率 |
| アモキシシリン/クラブラン酸 | 上記に類似 |
| トリメトプリム-スルホンアミド | 代替選択肢 |
治療期間: 3〜5日間の短期療法。従来推奨されていた7-14日間は不必要に長く、耐性菌発生リスクを増加させる。
使用を避けるべき薬剤:
鎮痛剤のみの選択肢: NSAIDsの投与で臨床症状を緩和しながら培養結果を待ち、実際に細菌性であることが確認されてから抗菌薬を開始するアプローチも選択肢として提示されている。
治療後の尿培養: 散発性膀胱炎では、臨床症状が消失していれば治療後の培養は不要。
6か月に2回以上、または12か月に3回以上の発生。
基本方針: 培養・感受性結果に基づく標的治療。再発の背景因子(解剖学的異常、内分泌疾患、免疫抑制など)の精査が優先される。
経験的治療: グラム陰性腸内細菌科をターゲットとし、フルオロキノロン系やセフォタキシム等が合理的な第一選択となる(ここでのみフルオロキノロンが選択肢に入る)。
治療期間: 従来の4-6週間から7-14日間で十分との現在のエビデンス。
猫の下部尿路症状は以下の原因頻度で発生する:
| 原因 | 頻度 |
|---|---|
| 猫特発性膀胱炎(FIC) | 最多(約60-70%) |
| 尿路結石 | 約15-20% |
| 細菌性膀胱炎 | 少数(若い猫では稀) |
若い猫で下部尿路症状=「膀胱炎だから抗菌薬」は極めてよくある誤りである。まず尿培養でFICを除外(=無菌であることを確認)した上で治療方針を決定すべきであり、盲目的な抗菌薬投与は不適切な医療行為である。
ISCAIDガイドラインが一貫して強調するのはantimicrobial stewardship(抗菌薬の適正使用)である。不必要な抗菌薬投与は耐性菌の選択圧を高め、将来的に治療が困難な感染症を生み出す。犬猫の膀胱炎管理においても、「本当に細菌性か」「本当に抗菌薬が必要か」を常に問い直す姿勢が求められる。
クランベリーエキスやメテナミンの犬猫UTIに対する投与を支持する十分なエビデンスは存在しない。