「とりあえずセフェム」から卒業する。ISCAID(国際コンパニオンアニマル感染症学会)/AAHA(米国動物病院協会)ガイドラインに基づく合理的な抗菌薬選択。
抗菌薬は「臓器 × 起因菌 × 第一選択」の3軸で選ぶ。 まず第一選択薬(アモキシシリン、第一世代セフェム、ST合剤)を検討し、フルオロキノロン・第三世代セフェムは最終手段として温存する。 → 培養検査なしでの経験的治療は「単純症例 × 初回」に限る。
graph TD
A["感染症を疑う"] --> B{"抗菌薬必要か"}
B -->|"いいえ"| C["対症療法 経過観察"]
B -->|"はい"| D{"感染種類 重症度"}
D -->|"単純 初回"| E["経験的治療"]
D -->|"複雑 再発 重症"| F["培養検査推奨"]
E --> G["Tier 1 抗菌薬"]
F --> H["培養結果待ち Tier 1/2"]
G --> I{"臨床改善 3-5日"}
H --> J{"培養結果判明"}
I -->|"改善あり"| K["治療継続 期間遵守"]
I -->|"改善なし"| F
J -->|"感受性あり"| K
J -->|"感受性なし"| L["Tier 3 検討"]
L --> M["感受性確認後 慎重使用"]
K --> N["治療完了"]
M --> N
subgraph 抗菌薬グループ
G -->|"例: アモキシシリン ST合剤 セファレキシン"| I
L -->|"例: フルオロキノロン 第3世代セフェム"| M
end
| 臓器・疾患 | 第一選択 | 培養の要否 |
|---|---|---|
| 散発性細菌性膌胱炎 尿路感染症 |
アモキシシリン ST合剤(スルファメトキサゾール・トリメトプリム) |
初回であっても可能な限り全例で培養を推奨 |
| 複雑性UTI 尿路感染症 |
培養結果に基づく | 必須 |
| 表在性膿皮症 | 外用抗菌薬が第一 全身投与ならセファレキシン |
再発・難治例で |
| 猫上部気道 | 10日間の経過観察 →ドキシサイクリン |
通常不要 |
| 周術期予防 | セファゾリン IV (執刀30分前) |
不要 |
| 歯科処置 | 原則不要 (全身疾患ある場合のみ) |
不要 |
| ❌ 旧来 | ✅ 最新 |
|---|---|
| UTIにはエンロフロキサシン | 散発性UTIにFQ(フルオロキノロン)は過剰。アモキシシリンで十分 |
| 膿皮症=即内服抗菌薬 | 表在性なら外用療法(クロルヘキシジン等)が第一選択 |
| 猫の鼻水=即抗菌薬 | ウイルス性が大半。10日間は経過観察が推奨 |
| 歯科処置前に抗菌薬予防投与 | 健康な犬猫では不要(心疾患等の既往がある場合のみ) |
ISCAIDガイドラインでは、臓器別に推奨される抗菌薬が明確に示されている。共通する原則は「最も狭域スペクトラムの薬剤を、十分な期間で使う」こと。
2024年の研究では、施設レベルのAMS(抗菌薬スチュワードシップ: 抗菌薬の適正使用推進活動)ガイドライン導入により、CIAs(Critically Important Antimicrobials: 人医療にとって極めて重要な抗菌薬)の処方が有意に減少したことが報告されている。
WHO(世界保健機関)が「人医療にとって最も重要な抗菌薬」に分類。獣医領域での乱用は、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)/MRSP(メチシリン耐性ブドウ球菌)など多剤耐性菌の選択圧を高める。
まず「本当に抗菌薬が必要か?」を問う → 必要なら第一選択薬 → 効果不十分なら培養検査 → 結果に基づき変更。
初回の散発性感染症(散発性細菌性膀胱炎、初発の表在性膿皮症)であっても、初回から可能な限り全例で培養検査を行うことが推奨される。ただし結果判明前に経験的治療を開始し、3〜5日で臨床改善がなければ感受性結果に基づき切り替える。
培養の費用対効果を飼い主に説明する際は「的確な抗菌薬を選ぶことで治療期間が短くなり、結果的にコストダウンにつながる」とフレーミングする。