肺高血圧症は肺血管抵抗の上昇により右心への後負荷が増大し、最終的に右心不全に至る疾患群である。犬猫における主な原因は以下のように分類される。
| グループ | 原因 | 特徴 |
|---|---|---|
| 前毛細血管性 | 原発性(特発性)PH、フィラリア症、慢性血栓塞栓症 | 肺動脈自体の病変 |
| 後毛細血管性 | 左心疾患(僧帽弁閉鎖不全症、DCMなど)に続発 | 最も一般的。左房圧上昇が肺静脈圧を押し上げる |
| 低酸素性 | 慢性気管支疾患、気管虚脱、短頭種気道症候群 | 慢性低酸素による肺動脈リモデリング |
| 多因子性 | 上記の複合 | 複数の因子が関与するケースが多い |
犬では左心疾患(特に僧帽弁閉鎖不全症)に続発する後毛細血管性PHが最も多く、高齢の小型犬で頻度が高い。
PHの確定診断は本来、右心カテーテル検査による直接測定であるが、臨床現場では非侵襲的な心エコー検査による推定が標準的である。
| TR最大血流速度 | 推定圧較差(PG) | 解釈 |
|---|---|---|
| < 2.8 m/s | < 31 mmHg | PHの可能性は低い |
| 2.8〜3.4 m/s | 31〜46 mmHg | PHの疑い(他の所見と総合判断) |
| > 3.4 m/s | > 46 mmHg | PHの可能性が高い |
PDE5阻害薬であるシルデナフィルは、肺血管平滑筋のcGMP分解を抑制し、肺動脈の選択的な血管拡張をもたらす。
⚠️ シルデナフィルの急な中断は禁忌: 急な投薬中止はリバウンド性の重篤な肺高血圧クリーゼを引き起こし、急性右心不全から突然死に至る可能性がある。減量は必ず2〜4週間かけて段階的に行う。
後毛細血管性PHの場合、まず原疾患(僧帽弁閉鎖不全症やDCM等)の治療を最適化することが優先される。肺動脈に対する血管拡張薬(シルデナフィル等)を安易に使用すると、肺血流が増加して左房への容量負荷がさらに増大し、肺水腫を悪化させるリスクがある。