「不整脈を見つけたけど、治療すべき?経過観察でいい?」救急で遭遇する不整脈の鑑別と、治療開始の判断基準を整理。
救急で遭遇する不整脈の対応原則は「不整脈そのものを治すのではなく、血行動態への影響を治療する」。心室性期外収縮(VPC)の散発は治療不要だが、持続性心室頻拍(VT: HR>160〜180 bpmかつ灌流低下)はリドカインの適応。上室性頻脈(SVT)は迷走神経刺激(頸動脈洞マッサージ等。※眼球圧迫は網膜剥離や眼球損傷の重大なリスクがあるため現在は絶対禁忌)で診断的に鑑別し、反応がなければ薬物治療。徐脈(房室ブロック・洞不全症候群)は症候性ならアトロピン反応試験を行い、反応なければペースメーカーの適応を検討。まず不整脈の原因(電解質異常、GDV、低酸素、薬剤性など)を検索・是正することが最優先。
graph TD
A["心電図所見から不整脈を鑑別"] --> B{"心拍数は?"}
B -->|"頻脈 (犬>160 / 猫>220 bpm)"| C{"QRS幅は?"}
C -->|"幅広い (>0.06秒)"| D{"リズムは?"}
D -->|"規則的"| E["心室頻拍 (VT)"]
E --> F["初期治療: リドカイン 2mg/kg IV"]
C -->|"狭い (<0.06秒)"| G{"リズムは?"}
G -->|"規則的"| H["上室性頻拍 (SVT)"]
H --> I["初期治療: 迷走神経刺激"]
G -->|"不規則"| J["心房細動 (AF)"]
J --> K["初期治療: ジルチアゼム"]
B -->|"徐脈 (犬<60 / 猫<120 bpm)"| L{"P波とQRSの関係は?"}
L -->|"P-QRS解離"| M["3度房室ブロック"]
M --> N["アトロピン反応試験"]
L -->|"PR延長"| O["1度/2度房室ブロック"]
B -->|"正常心拍"| P{"不規則なリズム?"}
P -->|"散発性幅広QRS"| Q["心室期外収縮 (VPC)"]
F --> R["治療効果評価と基礎疾患検索"]
I --> R
K --> R
N --> R
Q --> R
| 心拍数 | QRS幅 | リズム | 考えるべき不整脈 | 初期治療 |
|---|---|---|---|---|
| 頻脈 (>160 bpm) |
幅広い | 規則的 | 心室頻拍(VT) | リドカイン 2mg/kg IV |
| 狭い | 規則的 or 不整 | SVT / 心房細動(AF) | 迷走神経刺激 → ジルチアゼム | |
| 徐脈 (犬<60 / 猫<140 bpm) |
正常 | 規則的 | 洞徐脈 / 洞不全症候群 | アトロピン反応試験 |
| 正常〜幅広 | 不整 | 2度〜3度房室ブロック | アトロピン反応試験 → ペースメーカー検討 |
| ❌ 旧来 | ✅ 最新 |
|---|---|
| VPCが出たらすぐリドカイン | 散発性VPCは治療不要。持続性VTで血行動態に影響がある場合のみ治療。「R-on-T」も単独では治療指標にならない |
| 不整脈=心臓の問題 | 救急不整脈の多くは二次的原因(電解質異常・低酸素・疼痛・脾臓疾患・GDV等)。原因治療が最優先 |
| リドカインが効かなければプロカインアミド | リドカイン不応のVTにはソタロール(1〜2mg/kg PO BID)が現在の選択肢。プロカインアミドは獣医領域での使用報告が減少 |
| 猫の不整脈は稀 | 猫でも心筋症に伴う不整脈(AF、VPC)は少なくない。ただし猫の心電図判読は犬より記録が難しく、見落とされやすい |
| 項目 | 🐶 犬 | 🐱 猫 |
|---|---|---|
| 正常心拍数 | 60〜160 bpm(大型犬は低め) | 140〜220 bpm |
| P波 | 幅 <0.04秒、高さ <0.4mV | 幅 <0.04秒、高さ <0.2mV |
| QRS幅 | <0.06秒(大型犬 <0.05秒) | <0.04秒 |
| PR間隔 | 0.06〜0.13秒 | 0.05〜0.09秒 |
| 種類 | 心電図所見 | 臨床的意義 |
|---|---|---|
| 1度AVB | PR延長(犬>0.13秒) | 通常無症状。基礎疾患の検索 |
| 2度AVB(Mobitz I型) | PRが徐々に延長し、1拍QRSが脱落 | 迷走神経緊張で生理的にも起こる。多くは治療不要 |
| 2度AVB(Mobitz II型) | PRが一定のまま突然QRSが脱落 | 3度に進展する可能性。要注意 |
| 3度AVB(完全) | P波とQRSが完全に解離 | 症候性ならペースメーカーの適応 |