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🎯 結論

  • 落葉状天疱瘡(Pemphigus Foliaceus: PF)は犬猫で最も多い自己免疫性皮膚疾患であり、確定診断には皮膚生検による棘融解細胞(Acantholytic cells)の証明が不可欠である。
  • 全身性エリテマトーデス(SLE)は多臓器疾患であり、ANA(抗核抗体)検査陽性に加え、多発性関節炎や溶血性貧血など複数の臨床基準を満たすことで診断する。
  • 治療の基本は高用量プレドニゾロン(2.0〜4.0 mg/kg/day) による免疫抑制導入であり、寛解後は数ヶ月かけて慎重に漸減する。
  • ステロイド単独での維持が困難な症例では、アザチオプリン(犬のみ)、シクロスポリン、ミコフェノール酸モフェチルなどのステロイド温存薬を併用する。猫へのアザチオプリン投与は重篤な骨髄抑制を引き起こすため絶対禁忌である。

📖 詳細解説

病態と臨床像

落葉状天疱瘡は、表皮細胞間の接着タンパク(デスモグレイン)に対する自己抗体が産生されることで、表皮内に膿疱を形成する疾患である。臨床的には以下の特徴を示す。

  • 膿疱 → 速やかに破裂し痂皮(かさぶた)・びらんとして認識されることが多い
  • 好発部位: 鼻梁、耳介、眼周囲、肉球(フットパッド)
  • 肉球病変が認められた場合は天疱瘡の可能性を強く疑うべきである
  • 猫では耳介・爪床に好発し、爪周囲の膿疱・痂皮が特徴的

診断

  • 確定診断: 皮膚生検→病理組織検査において、好中球を伴う表皮内膿疱と棘融解細胞(Acantholytic cells)の存在を証明する
  • 細胞診では棘融解細胞が好中球に囲まれた像を認めることがあるが、確定には生検が必須
  • 膿疱が新鮮な状態(破裂前)で生検することが診断精度向上の鍵である
  • 鑑別疾患: 表在性膿皮症、皮膚糸状菌症、薬疹(薬剤誘発性天疱瘡)
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病態と臨床像

SLEは複数の臓器に同時に影響を及ぼす全身性の自己免疫疾患である。犬での報告が多く、猫では稀とされる。

  • 多発性関節炎(非びらん性): 最も多い症状の一つ。跛行、関節腫脹
  • 溶血性貧血(IMHA)や血小板減少症(ITP)
  • 皮膚病変: 鼻梁・耳介の紅斑、潰瘍、脱毛
  • 糸球体腎炎: 蛋白尿を伴う
  • 発熱、リンパ節腫脹

診断基準

  • ANA(抗核抗体)検査: 力価1:160以上などを陽性カットオフとすることが多い
  • ANA陽性のみでSLEと診断することはできない(偽陽性あり)
  • 臨床基準: 上記の臓器病変から2項目以上を満たし、かつANA陽性で感染症などを除外した場合にSLEと診断する
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導入期(免疫抑制の確立)

  • プレドニゾロン: 2.0〜4.0 mg/kg/day PO(犬・猫ともに)
  • 重篤な症例(溶血性貧血や広範な皮膚病変)では高用量側から開始する
  • 通常2〜4週間で臨床症状の改善が得られるが、完全寛解まで4〜8週間以上を要することもある

ステロイド温存薬(併用薬)

ステロイド単独での副作用軽減と維持管理のために、以下を併用する。

薬剤 用量 対象 主な副作用
アザチオプリン 2.0 mg/kg/day PO 犬のみ 骨髄抑制、肝毒性
シクロスポリン 5.0 mg/kg/day PO 犬・猫 消化器症状、歯肉過形成
ミコフェノール酸モフェチル 10〜15 mg/kg BID PO 下痢、骨髄抑制

⚠️ 猫へのアザチオプリン投与は絶対禁忌: 猫はチオプリン代謝酵素(TPMT)活性が低く、重篤かつ不可逆的な骨髄抑制(汎血球減少症)を引き起こす。

漸減プロトコル

  • 寛解確認後、数ヶ月かけてプレドニゾロンを慎重に漸減する
  • 目標は併用薬単独やより低用量での管理に移行すること
  • 急な減量・中断は再燃の原因となるため厳禁

モニタリング

  • アザチオプリン投与中は2週ごとのCBC・生化学検査が必須
  • 白血球数(特に好中球)の低下が認められた場合は直ちに減量または中止
  • 長期ステロイド投与例では医原性クッシング症候群、糖尿病、感染症への易罹患性に注意
  • 尿検査(蛋白尿、UPC)によるSLEの腎病変のモニタリングも重要
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  • PF: 治療反応は比較的良好であるが、多くの症例で生涯にわたる免疫抑制療法の継続が必要。完全寛解後に治療中止可能な症例は少数である
  • SLE: 腎病変を伴う場合は予後不良となることがある。多臓器病変の管理には長期的な専門医との連携が推奨される
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Q. 「天疱瘡は人にうつりますか?」

天疱瘡は自分の免疫システムが自分の皮膚を攻撃してしまう「自己免疫疾患」です。感染症ではありませんので、人や他の動物にうつることはありません。ただ、見た目が痛々しいのでご心配だと思いますが、適切なお薬で多くの場合コントロールできます。

Q. 「薬をやめることはできますか?」

残念ながら、天疱瘡やSLEは多くの場合、生涯にわたってお薬の継続が必要な病気です。ただし、うまくコントロールできれば薬の量や回数を減らせることもあります。定期的な血液検査で副作用のチェックをしながら、最小限のお薬で維持できるよう調整していきます。

Q. 「免疫を抑えるお薬を使って、他の病気にかかりやすくなりませんか?」

おっしゃるとおり、免疫を抑えるお薬を使うと感染症にかかりやすくなるリスクはあります。そのため、定期的に血液検査を行い、薬の量を必要最小限に調整しています。また、ワクチン接種のタイミングや日常生活での注意点についてもアドバイスさせていただきますので、気になることがあればいつでもご相談ください。
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