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🎯 結論

  • コアワクチンは全犬猫が接種すべきものであり、基礎免疫の最終接種は必ず16週齢以降に行い、その後26週齢(6ヶ月齢)以降に1回追加する。以後のコアワクチン(犬CDV/CAV/CPV・猫FPV)のブースターは3年に1回より頻繁にする必要はない[1,2,4]。ただし狂犬病は日本では犬に毎年1回の接種が法律で義務であり、この間隔とは別枠である[A]
  • WSAVA 2024はレプトスピラ(流行地域の全犬)とFeLV(1歳未満・外出猫)を条件付きコアに格上げした[1,3]
  • 体重に関わらず必ず1バイアル全量を接種し、小型犬へのハーフドーズは推奨されない[1,2,4]
  • ワクチンアナフィラキシーの第一選択はステロイドではなくアドレナリン IM(約0.01 mg/kg)である[14]。猫ではFISS(注射部位肉腫)に備え、肩甲間を避けて四肢遠位部(または尾)に接種する[1,4]

📖 詳細解説

WSAVA 2024・AAHA 2022(2024更新)・AAHA/AAFP 2020に基づく分類[1,2,3,4]:

分類 犬 猫
コア(全頭) CDV(犬ジステンパーウイルス), CAV-2(犬アデノウイルス2型:CAV-1に交差防御), CPV-2(犬パルボウイルス2型) FPV(猫汎白血球減少症ウイルス), FCV(猫カリシウイルス), FHV-1(猫ヘルペスウイルス1型)
条件付きコア(2024年改訂) レプトスピラ:流行地域で、関与血清群が判明し適合ワクチンが入手できる地域では全犬にコア[1]。AAHA 2024更新は米国の全犬にコア・年1回[3] FeLV:FeLV関連疾患が発生する地域では、1歳未満の全猫と、外出する(または外出猫と同居する)成猫にコア[1]。AAHA/AAFPも1歳未満はコア[4]
狂犬病 WSAVAは流行地域では法的義務の有無にかかわらずコア[1]。日本は1957年以降国内発生がない清浄国だが、狂犬病予防法により犬は登録+毎年1回の予防注射が義務(猫に法的義務なし)[A] 同左(日本では猫に法的義務なし)[A]
ノンコア ボルデテラ, パラインフルエンザ 等 Chlamydia felis, ボルデテラ 等
  • 国内のレプトスピラ症は届出伝染病で、犬の届出頭数は令和4年38頭・令和5年30頭・令和6年55頭。令和6年は7〜12月に50頭が集中した[D]。地域差が大きく、コア扱いとするかは地域の発生状況と生活様式で判断する。
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疾患 未接種時の転帰 備考
CPV-2 / FPV 無治療では生存率が9%程度まで低下しうる。三次施設の集中治療で生存率80%超[7] WSAVAは集団免疫の目安として75%以上の接種率を例示(専門家意見)[8]
CDV 高致死性疾患に分類される(AAHA)[2]。子犬・成犬別の死亡率は論文内に記載なし 神経症状発現時は予後不良
FeLV 進行性感染猫の診断後生存期間中央値は2.4年(AAFP 2020)[6] 1歳未満の猫ではコア扱い[1,4]
狂犬病 日本の令和6年度の登録犬6,048,725頭に対し注射頭数4,281,702頭(70.8%)[B] 2006年・2020年に輸入感染症例(ヒト)[A]
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基礎免疫(犬猫共通)

  • 6〜8週齢で開始、2〜4週ごとに接種[1,2,4]
  • 最終接種: 必ず16週齢以降[1,2,4]。CDV/CPVの高リスク地域では18〜20週齢が望ましいとされる(AAHA 2022)[2]
  • 目的は移行抗体(MDA)干渉の回避。MDAは個体・同腹間で大きくばらつく[1]

追加接種(基礎免疫後の1回)

  • 26週齢(6ヶ月齢)以降に1回が推奨される(WSAVA 2024・AAHA/AAFP 2020)。12〜16ヶ月齢まで待つより感受性期間を短縮できる[1,4]。AAHA 2022は「1年以内」[2]
  • 20週齢以降の抗体検査で防御が確認できた子犬は、この26週齢接種を省略できる[1]

成犬・成猫のブースター

  • 犬CDV/CAV/CPV・猫FPV(生ワクチン): 3年に1回より頻繁にする必要はない[1,2]。国内でも、ノビバックDHPPiの添付文書は「ジステンパーウイルス、犬パルボウイルス及び犬アデノウイルス(2型)については3年の抗体持続、犬パラインフルエンザについては1年の防御効果」を明記し追加接種間隔の考慮を求めている[C]
  • 猫FCV/FHV-1: 室内単頭・ペットホテル非利用の低リスク猫は3年以上、外出・多頭・ホテル利用の高リスク猫は年1回まで短縮を検討する[1]
  • レプトスピラ: 年1回(DOI 12〜18ヶ月)[2,5]。初回は12週齢以降が示唆される[2]
  • 狂犬病: 日本では犬に毎年1回(法定)。ワクチンの表示DOIより法令が優先される[1,A]
  • 別日に分けて接種する場合、ワクチン間は少なくとも2週間あける[2]

用量に関する基準

  • 体重・年齢に関わらず必ず「1バイアル全量」を接種する[1,2,4]
  • 小型犬への分割投与(ハーフドーズ)は、AAHA「勧められない」・WSAVA「全量未満は推奨しない」・AAHA/AAFP「減量は推奨しない」であり推奨されない[1,2,4]。副反応対策は減量ではなく、1回の来院で打つ本数を減らすことである[2]
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  • 対象抗原は犬CDV/CAV/CPV、猫FPVに限られる。20週齢以降(最終接種から4週以降)に実施する[1]
  • 院内キットの精度は製品・抗原で大きく異なる:
    • ドットブロットELISA 1製品の検証(健康犬563検体): 感度96.0〜96.8%、特異度87.5〜94.3%[9]
    • 3製品の比較(ウイルス中和法を基準、260検体): CPV-2は全製品で感度79.0〜100%・特異度97.8〜100%と信頼できる一方、CDV・CAVは製品によって特異度43.5%/55.3%(偽陽性=非防御犬を「免疫あり」と誤判定)。高特異度の製品は逆に感度17.4%/33.1%[10]
    • WSAVA 2024も「頼るなら特異度が高いこと」を条件とし、CDV/CAVは検査機関のゴールドスタンダード法のほうが信頼できるとする[1]
  • 陽性(抗体あり): その抗原(狂犬病を除く)の再接種は延期できる[1]。AAHA 2022は、日常的な抗体価検査は副反応歴・ワクチン関連免疫介在性疾患の疑い・飼い主のためらいがある場合を除き通常は勧めていない[2]
  • 注意: FCV/FHV-1は抗体の有無が防御の信頼できる予測因子とされない[1]。レプトスピラ等ノンコアの抗体検査も防御の予測としては信頼性がはるかに低い[1]。狂犬病は抗体価が接種の代替にならない[2]
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発生率

対象 発生率 リスク因子
犬 19.4例/10,000来院(0.19%、2016〜2020年・465万頭、接種後3日以内)[13]。旧データは38.2例/10,000頭(2002〜2003年)[11] 体重が軽いほど高率(5 kg以下で最大)、1回の注射本数(1→4本で増加;10 kg以下では1本追加ごとに27%増)、フレンチ・ブルドッグ/ダックスフンド(OR>4)、単剤では狂犬病ワクチンが最高[11,13]
猫 51.6例/10,000頭(0.52%、2002〜2005年・49.6万頭、接種後30日以内)[12] 注射本数・総容量、1歳前後、去勢避妊済み。最多は元気消失±発熱[4,12]
  • 猫のアナフィラキシーは約1〜5例/10,000接種[4]
  • I型過敏反応の多くは接種後数分〜1時間以内に発現する。犬のAEFV調査ではアナフィラキシーは全例が60分以内、約半数(46.3%)が5分以内に発症した[1]。接種後少なくとも30分の院内観察は臨床慣行であり、ガイドラインの定めた数字ではない
  • 副反応歴のある個体の再接種: 犬はジフェンヒドラミン前投与を検討する[2]。猫は抗ヒスタミン薬+グルココルチコイドを20〜30分前に投与し、数時間の観察が推奨される[4]。WSAVAは最長24時間の監視を挙げる[1]

アナフィラキシーの治療(RECOVER 2026 First Aid ガイドライン)[14]

  • 低血圧のない(中等度)アナフィラキシー: できるだけ早くアドレナリン IM。ヒトのガイドラインと同じ約0.01 mg/kg(1 mg/mL製剤で0.01 mL/kg)を根拠とする。ヒト用オートインジェクター(0.3 mg)は巨大犬種で複数本を要するため、体重ベースの用量で投与する
  • 低血圧を伴う(重度)アナフィラキシー: IVボーラスではなく持続静脈内投与(CRI)でMAP 70 mmHgを目標に滴定する
  • グルココルチコイドのルーチン投与は推奨されない(強い推奨)。抗ヒスタミン薬(H1拮抗薬)は蕁麻疹・顔面浮腫のみの「合併症のないアレルギー反応」には推奨されるが、呼吸器症状を伴う反応ではアドレナリンが第一選択で代替にならない
  • 反復投与の至適間隔は論文内に記載なし(反応をみて判断する)
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  • 発生率: 8研究・1,406万接種のメタ解析で8.8例/100,000接種(95%CI 0.8〜100.6)=約1例/10,000接種[15]。研究間の異質性が極めて高く、報告は1/1,000〜1/10,000頭(北米)[16]、英国では接種来院5,000〜12,500回に1例[16]と幅がある
  • アジュバント含有不活化ワクチンは強い局所炎症を起こしFISSとの関連が示唆されるが、リスクゼロのワクチンはない[17]。AAHA/AAFPは発生を「まれで特発的」とする[4]
  • 転移率は10〜28%[17]

3-2-1ルール(生検適応基準)[4]

接種部位のしこりが以下のいずれかに該当:

1. 接種後3ヶ月以上持続
2. 直径2cm以上
3. 接種後1ヶ月を過ぎても増大し続けている

該当すれば切開生検(FNAは診断材料が不足し、切除生検は必要マージンを満たさない)[4]

外科的マージン

  • 側方5cm・深部2筋膜面の広範切除(Phelps 2011: 91例)[18]。ABCDは「最低3cm、できれば5cm」[17]。肩甲間発生例は根治切除が困難[1]
  • AAHA/AAFPは肩甲間への接種と減量を推奨せず、四肢遠位部(断脚で5cm・2筋膜面を確保できる)を推奨。尾部接種も報告されるが遠位尾部でなければ意味がなく実用性は限定的[4]
  • WSAVA 2024: 肩甲間への皮下注射は行わない、四肢遠位部接種が「ゴールドスタンダード」、接種ごとに部位を変えて記録する、皮下投与が可能なら筋肉内投与しない[1]
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Q. 「ワクチンは毎年打たないといけないのですか?」

主要な(コア)ワクチンは、子犬・子猫の時期に基礎免疫を完成させ、6ヶ月齢または1歳で1回追加したあとは、3年以上の間隔で十分とされています。国内で使われているワクチンの添付文書にも「3年の抗体持続」と書かれているものがあります。ただし狂犬病は別で、犬は法律で毎年1回の接種と登録が義務です。レプトスピラなど一部のワクチンは年1回が必要な場合があり、外に出る猫ではカリシ・ヘルペスを年1回にすることもあります。生活環境に合わせてご相談しましょう。

Q. 「小さい犬だから半量の方が安全ですか?」

ワクチンは体重に関係なく1本分を全量接種します。半量では十分な免疫がつかず、打ったのに感染するリスクが残ります。小型犬で副反応がやや出やすいのは事実ですが、対策は減量ではなく、同じ日に打つ本数を減らす(狂犬病と混合ワクチンの日を分ける)ことと、接種後少なくとも30分は院内で様子を見ることです。重い反応の多くは接種後数分〜1時間以内に起こるので、その時間帯に院内にいれば、その場で対応できます。

Q. 「猫のワクチンで腫瘍ができると聞きました」

ごくまれに、猫ではワクチンの接種部位に腫瘍ができることがあります。頻度は報告により幅がありますが、おおよそ1万回に1例前後です。そのため当院では、万一のときに手術しやすいよう、首の後ろではなく後ろ足や尻尾に接種しています。接種部位のしこりが3ヶ月以上残る、2cmを超える、1ヶ月を過ぎても大きくなる、のどれかに当てはまったら早めにご来院ください。
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  1. Squires RA, Crawford C, Marcondes M, et al. 2024 guidelines for the vaccination of dogs and cats – compiled by the Vaccination Guidelines Group (VGG) of the World Small Animal Veterinary Association (WSAVA). J Small Anim Pract. 2024;65(5):277-316.
  2. Ellis J, Marziani E, Aziz C, et al. 2022 AAHA Canine Vaccination Guidelines. J Am Anim Hosp Assoc. 2022;58(5):213-230.
  3. Ellis J, Marziani E, Aziz C, et al. 2022 AAHA Canine Vaccination Guidelines (2024 Update). J Am Anim Hosp Assoc. 2024;60(6):1-19.
  4. Stone AE, Brummet GO, Carozza EM, et al. 2020 AAHA/AAFP Feline Vaccination Guidelines. J Feline Med Surg. 2020;22(9):813-830.
  5. Sykes JE, Francey T, Schuller S, et al. Updated ACVIM consensus statement on leptospirosis in dogs. J Vet Intern Med. 2023;37(6):1966-1982.
  6. Little S, Levy J, Hartmann K, et al. 2020 AAFP Feline Retrovirus Testing and Management Guidelines. J Feline Med Surg. 2020;22(1):5-30.
  7. Mylonakis ME, Kalli I, Rallis TS. Canine parvoviral enteritis: an update on the clinical diagnosis, treatment, and prevention. Vet Med (Auckl). 2016;7:91-100.
  8. Day MJ, Horzinek MC, Schultz RD, Squires RA. WSAVA Guidelines for the vaccination of dogs and cats. J Small Anim Pract. 2016;57(1):E1-E45.
  9. Egerer A, Schaefer Z, Larson L. A point-of-care dot blot ELISA assay for detection of protective antibody against canine adenovirus, canine parvovirus, and canine distemper virus is diagnostically accurate. J Am Vet Med Assoc. 2022;260(15):1928-1933.
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法令・公的資料

A. 狂犬病予防法(昭和25年法律第247号)第4条・第5条/厚生労働省「狂犬病」(発生状況・輸入症例)

B. 厚生労働省「狂犬病予防法に基づく犬の登録頭数と予防注射頭数等」(令和6年度)

C. 動物用医薬品等データベース(NVAL)ノビバック DHPPi(4488)/DHPPi+L(4489)添付文書「その他の注意」

D. 農林水産省「監視伝染病の発生状況」届出伝染病発生年報(令和4〜6年次)犬レプトスピラ症